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                  県美メールマガジン

                                     No.15
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 11月24日より企画展「種谷扇舟 ―書の源を探究し、新しい書の創造へ−」
が開催されます。今月号は、書家種谷扇舟の芸術を紹介させていただきます。
美術館にご来館いただき、作品をご覧いただければ幸いです。
また、同時期に、「板倉鼎・大野隆徳・柳敬助」、「日本画の花」、「浅井忠・フ
ォンタネージとバルビゾン派」、「こどものための展覧会−篠崎*輝夫とシルク
ロード−」も開催しておりますので、同時に御覧いただけます。
(*「崎」は「山へん」に「立」、下に「可」)

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企画展「種谷扇舟 ―書の源を探究し、新しい書の創造へ−」

会 期  平成19年11月24日(土)〜平成20年1月14日(月)
休館日  月曜日(ただし祝日の場合は開館し、翌日休館)
     年末・年始(平成19年12月28日〜平成20年1月4日)
開館時間 9:00〜16:30
入館料  一般500円 高大生250円(65歳以上、中学生以下は無料)


書家、種谷扇舟の軌跡

 種谷扇舟を語るとき、三つの活動をキーワードとすることができます。
一つは本県で多くの教え子を育成し書の世界に導いた教育者であり、中国の
古典の書の研究者であり、近代詩文書の可能性を追求した書家です。
 この三点を踏まえながら、種谷扇舟の足取りを辿ります。

−書との出会い−
 種谷は大正3年、八街市に生まれます。書を意識したきっかけは、小学校
3年生の時に先生の勧めで席書会に出場したことでした。それまで書を習っ
たことはありませんでした。
 昭和4年、千葉師範学校入学時に、新任教師として赴任した浅見喜舟氏と
の出会いは、種谷の将来を決定付けるものでした。喜舟氏の指導で、書の学
び方を知り、尾上柴舟、豊道春海ら書家たちを紹介され、競書雑誌への投稿
や書道展への出品、それらの活動を通じて知り合った人たちとの書の交換等
によって自己研鑽を重ねていきます。扇舟の名は、喜舟氏の教えにより、那
須与一の「扇」を狙う心境と喜舟氏の舟の字から名付けられました。

−教育者として−
 昭和9年、新任教師として八街市の実住小学校を皮切りに小学校12年、中
学校8年、昭和27年に喜舟氏の勧めで千葉一高で教鞭をとり、高等学校17年、
大学20年、社会教育5年の長きに亘り、教鞭をとります。
 種谷は、書の学習方法として、手本はめったに書かず、中国の古典から直
接学ぶことを勧め、中国や日本の碑文を写し取った拓本をもとに指導しまし
た。手本は書いた人の解釈や好みが入るので、中国の古典の本物を見たり、
本物から直接学ぶことがおろそかになることを恐れたのです。
 しかし、種谷の研究室には書に関する貴重な書物や道具がいつも山積みさ
れ、生徒は見る事も借りる事も許されました。また秘蔵の筆、墨、紙であっ
ても制作に必要であれば惜しみなく生徒に使用させました。その長年の教え
子達を中心に昭和27年に「白扇書道会」が結成されます。

―中国の古典を求めて―
 中国の古典の書の多くは碑文として石に刻まれて残されています。それら
は拓本として写し取られ、臨書として書を学ぶ人たちの手本となってきまし
た。その中でも、種谷を魅了したのは磨崖碑でした。
 磨崖碑とは、書家が断崖など場所を選び、朱墨で書を書き記した作品を刻
師が彫ったものです。その場所を囲む山や樹木などの雰囲気はもとより、選
んだ岩の位置、岩肌、岩の欠損部分なども作品に生かして完成されています。
 古典に直接学ぶことの重要性を説いていた種谷にとって、古典の実物の書
がどのような場所に息づいて、それを取り囲む自然と調和しているのかを知
ることは重要でした。
 昭和40年から70回を越える中国歴訪を重ねます。なかでも北魏の書家、鄭
道昭(ていどうしょう)が山東省に残した磨崖碑に魅せられ、天柱山、雲峰
山、太基山などの山々を探訪し、収集した拓本は数万点を超えました。この
旅をとおして、種谷は日中の友好関係の架け橋にもなりました。
 大きく奔放に描かれた〈雲峰山〉とそれに寄り添うような〈疲れたよ俺〉。
この作品「雲峰山 疲れたよ俺」からは、鄭道昭が好んだ山、雲峰山に登り、
目的を達した充実感と鄭道昭に寄せる思慕が感じられます。

―近代詩文書の研究と普及―
 甲骨文字や、青銅器の銘文等に端を発する漢文は中国で誕生し、やがて日
本に伝来し、仮名が生み出されました。これら古典の書はその時代の言葉で
書かれ、その時代を反映するものでした。書の分野は戦前までこの伝統的な
漢字、仮名、篆刻で形成されていました。戦後、現代には現代の文体の方が
感情移入しやすく、また多くの人の理解や共感を呼ぶのではないかというこ
とで、漢字とかなが交じった近現代の詩歌や俳句、或いは自作の詩などを素
材にする運動が書家の金子鴎*亭、飯島春敬、日比野五鳳らにより提唱されま
す。この漢字と仮名が交じった現代文は、それぞれの思想と主張により「新
調和体」「近代詩文書」「漢字仮名交じり文」「新和様」等の名称で呼ばれ
ました。種谷も漢字から出発した書家でしたが、技法が注目されがちであっ
た書の世界に心を吹き込もうと近代詩文に取り組みました。
 本館で開催している「日本童謡の書」展は種谷の主宰により今年で19回を
重ねる全国規模の公募展です。日本人に馴染み深い童謡を題材として自分の
解釈で書に表現しようという近代詩文書の精神を反映した興味深い試みです。
童謡の持つリズムや旋律は、文字の配置、大きさ、勢い、墨色など、書き手
により異なります。この作品「山のお寺の鐘がなる」は「雲峰山 疲れたよ
俺」とともに種谷の絶筆のひとつとなりました。この作を種谷は思わず口ず
さみながら制作したそうです。リズムを刻むように散らされた軽やかな文字
には、童心に返るような思いが感じられます。
 本展では自作の詩をはじめ、童謡、武者小路実篤の詩や石原八束の俳句な
どを題材にした作品、中国の古典を臨書した作品など、種谷の足跡の集大成
となる約40点の作品を展示し、その軌跡を辿ります。(学芸課 相川順子)
(*「鴎」の偏は、「メ」が「口を三つ」)

★県立美術館実技講座のお知らせ
「金工講座」
銅板レリーフと彫金の制作を通して、各種工具の取扱い方を学習すると
ともに、金工の基本的な技法を修得する講座です。

日程 1/17(木)、18(金)、22(火)〜25(金)、29(火)〜31(木)、2/1(金)
定員 18名
講師 小林正利先生
費用 14000円
申込締切 12月20日(木)必着
申込方法
往復ハガキに、講座名、住所、氏名、電話番号を明記して、下記にお申し
込みください。
申込が定員をこえた場合は、抽選とさせていただきます。
申込先 〒260-0024 千葉市中央区中央港1-10-1 千葉県立美術館普及課

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◆無断転載はお断りします。
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     県美メールマガジン No.15 2007.11.15
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