■ミニトピックス展 「山岳鳥瞰図作家・五百沢智也氏が描いた山 その3」 ―2016年8月11日『山の日』に向けて― 会期:平成28年3月12日~平成28年6月5日
会場:本館にて開催 |
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「山に親しみ、山の恩恵に感謝する」ことを目的にした新しい祝日「山の日」が、平成28年8月11日から施行されます。
これに向けて、氷河地形研究者であり、鳥瞰図作家でもあった故・五百沢智也氏(千葉県一宮町)の山岳鳥瞰図や山のスケッチを、4回に分けて 紹介します。 第3回は、春の展示「石材が語る―火山がつくった日本列島」に合わせ、日本各地の火山を描いた鳥瞰図を紹介します。これらの作品は、空からしか見えない絶好のアングルの地形景観を、研究者の共有のデータとするため描いたもので、細かい地形表現が火山地質とよく対応していることが読み取れます。科学的かつ芸術的な作品をお楽しみ頂ければ幸いです。 <主な展示品> ・鳥瞰図拡大パネルと原図 焼岳西北西面、八ヶ岳西南面、八ヶ岳を北西上空からみる。 ・鳥瞰図拡大パネル 乗鞍岳山頂北北西面、御岳山西面、立山カルデラ鳥瞰図。 ・スケッチ 蔵王山火口湖・お釜、(蔵王山)冬のお釜、(鳥海山猿穴溶岩)猿穴火口。 |
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<シリーズ予定> | |
第1回 日本アルプスの広域展望図 第2回 山のスケッチ画 第3回 日本各地の火山地形 第4回 五百沢智也氏が描く富士山 |
平成27年8月11日~11月29日 (展示終了) 平成27年12月15日~平成28年2月28日 (展示終了) 平成28年3月12日~6月5日 平成28年6月14日~8月31日 |
<主な展示品> | |
五百沢智也画 「焼岳西北西面」 |
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北アルプス上高地西側にある焼岳火山を西側から見た鳥瞰図です。数個の火口がある複雑な形をした焼岳山頂が見えます。山頂の奥には、上高地の大正池を形成した上堀沢の火山扇状地が見えます。山体と手前の谷にかけて、植生が少なかったり、落葉樹林が多くて、裸地の赤みがかった彩色のされている部分は、焼岳火山の最新の噴出物である、焼岳円頂丘溶岩と、周囲に流れた中尾火砕流の堆積面です。 | |
五百沢智也画 「八ヶ岳西南面] |
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南八ヶ岳火山列を西側から眺めた図です。手前に阿弥陀岳が聳え、その奥に、右から、最高峰の赤岳、横岳、硫黄岳がスカイラインをなしています。南八ヶ岳は、古期八ヶ岳火山の上に、新期八ヶ岳火山が載ったあと、山頂部が侵食されて険しい数個の岩峰に分かれています。この絵の前景のやや緩い稜線の部分は、古期八ヶ岳火山体の残りで、赤岳と阿弥陀岳の間の尾根にある中岳の峰が、古期八ヶ岳火山の高まりです。新規八ヶ岳火山体は、阿弥陀岳や、赤岳~硫黄岳の高まりとして残り、絵では、前景と中景の山の傾斜が急になる部分から上や、中岳山頂より高い部分が新期八ヶ岳火山体に当たります。 また、阿弥陀岳の左下の円頭の山(美濃戸中山)は、新期八ヶ岳火山の新しい溶岩円頂丘で、形も良く残っています。 |
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五百沢智也画 「蔵王山火口湖・お釜」 |
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蔵王火山の山頂中央火口丘、水が溜まって火口湖になっています。 | |
<五百沢智也氏紹介> | |
<五百沢智也氏年譜> 1933年 山形県山形市に生まれる。 幼少の頃より山形県内やその周辺の山登りに親しむ 1952年 東京教育大学理学部地学科地理学専攻入学。 大学在学中、日本各地の山と岩場に登る 1957年 大学卒業、建設省地理調査所(1960年に国土地理院と改称)に勤務。 5万分の1地形図の測量作成に携わる 1970年 国土地理院退職、以後フリーとなり、調査・執筆活動を行う。 9月~11月、第1回 ヒマラヤ行(これ以降ヒマラヤ行は13回を重ねる) 1979年 岳人「氷の山・火の山シリーズ」をまとめ「鳥瞰図譜日本アルプス」(講談社)刊行 1983年 「日本アルプスおよびヒマラヤ山脈における氷河地形および地誌の研究」により、 第19回秩父宮記念学術賞を受賞 1991年 千葉県一宮町に移る 2007年 千葉県立中央博物館 春の展示「山の科学画」開催 2013年12月 逝去 <主な著書> 鳥瞰図譜日本アルプス(講談社) ヒマラヤトレッキング(山と渓谷社) 山と氷河の図譜(ナカニシヤ)など |
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(文責・企画展示 地学科・八木 館友・吉村) |