第2期生態園教育普及事業「子どものための生態園」

生態園体験シート「森の調査隊」企画書

(森の調査隊パートナーによる運営ガイド)

 

平成15年3月18日
千葉県立中央博物館 生態学研究科

1 実施目的と概要
 第2期生態園教育普及事業-解説業務・講座・観察会実施方針-(平成14年12月4日 生態学研究科)において計画されている体験シート「森の調査隊」は、小学生などのこどもを含むグループを対象とした生態園利用促進プログラムである。この事業は、「体験シートを利用して、お客さんのみで園路を散策してもらい、自然体験につながる一連の行動を行ってもらう」もので、実施効果としては、自然観察・自然体験の方法を習得し、自発的に自然を楽しむことが可能となる。究極的には、生態園での体験は「原体験」となることを期待している。このプログラムによって現場で体験した感覚は、オリエンテーションハウスにおける会話や、家に持ち帰った記念品などによって、効果的に記憶として定着させることを想定している。
 本事業の実施は平成15年度からの5ヶ年を計画している(「子どものための生態園」事業概要(案)、平成15年1月8日 作成:生態学研究科)。平成14年度においては、生態園相談員(現生態園解説員)により試行的に運営され、一定の成果をだした。

2 体験シートの2つの実施手順
 体験シートは2種類の目的と運営方法により実施する。
 ・実施日の常時、来園者が気軽にシートを手にとり、プログラムを行ってもらう方法(以後、導入レベルとする)
 ・登録をしてもらい、以後、何度か再訪してもらうことを前提に行う方法(以後、再訪レベルとする)
 
1)導入レベル
 このレベルの目的を本事業の広報とお試し版と位置づけ、できるだけ多くの来園者にシートを手にとってもらい、やってもらうことを目標とする。
 用紙の設置場所はオリエンテーションハウスの外(荒天時はひとつめの扉の内側)の受付窓口とする。体験シートの種類は、自然体験の初心者レベルの5種類程度(森の調査隊い〜ほ参照)で、1年間通じて利用可能なものにする。体験シートとともに、貸し出し用の鉛筆と箋はさみを置く。宣伝用に上部(オリエンテーションハウスのひさしより懸垂)と、園門に看板を設置する。

2)再訪レベル
 このレベルの企画目的はリピーターの確保と、自然体験促進(本事業の主幹部)にある。
 体験シートは導入レベルの5種類に加え、季節毎にかわる5種以上作製し、解説員カウンター横に設置した用紙置き場から、参加者が自由に1枚取り出し、プログラムをやってもらう。始めてきた参加者には、園内に入るまえにやり方を説明し(「導入解説」)、鉛筆や箋はさみなどを貸し出す。園内でプログラムを楽しんだ参加者がオリエンテーションハウスにもどってきた際、「終了解説」をおこない、スタンプ押しなどをする。スタンプは所定の場所(スタンプの池)に押印し、5つたまったら(すなわち5種のプログラム終了後)、オリジナルペーパークラフトを進呈する。ペーパークラフトは8種作製し、進呈時に希望のものを一つ進呈するようにする。

両レベルの参加者の動線は以下の通り
 ・初めての経験者→外の導入レベルのシートを取る→園内活動→オリエンテーションハウスで終了解説(簡易なもの)→スタンプ押し→再訪レベルの勧誘
 ・再訪者→導入解説→再訪レベル(もしくは導入レベル)のシートを取る→園内活動→オリエンテーションハウスで終了解説→スタンプ押し(そして、ペーパークラフト授与)

3 パートナーによる導入解説
 パートナーは鉛筆と箋はさみを貸し出した後、以下のような説明を行う。
  「この「森の調査隊」は生態園の中でいろいろな問題を解いていくゲームです。いろいろな種類のシートがあるので、好きなのを1枚とってみてください。1枚おわったら、ここにもどってきて、みなさんの調査結果を報告してください。調査隊の報告の証拠としてスタンプを押していきます。1回に1枚ずつ持って行ってね。5種類の違うものが終わった人には、記念にこの生態園のオリジナル・ペーパークラフトを1種類差し上げます。たのしみにしていてください。難しい問題もあるかもしれないけど、時間制限はないので、ゆっくりと自分のペースでやってみてね。わからないことがあったら、もどってきてもいいよ。おわったら、スタンプを押すので、ここにもどってきてね。
 ここで、すこし、守ってもらいたいことがあります。それは、ロープの先には入らないということです。それから、道は周りにいろいろな生き物が暮らしているから、大声で話したり、走ったりしないでね。(落ち葉を採集する課題がある場合)これだというものを、一枚だけ(問題による)拾ってきてね。では、ゆっくりと解いてきて下さい。」

解説の際には以下の点に留意する。
・生態園にあまり来たことがない人、自然観察の初心者、小学校2年生以下の場合
 導入レベルをお勧めする。もちろん本人の希望を優先させる。

・グループの場合
 兄弟とその親などの場合は、離ればなれになることができず、また、同じものを一緒に観察する楽しさが生まれるため、同一のものをお勧めする。
 友人同士できた場合は、違うシートをわたしてやってもらうと、自分の発見を友人に報告する楽しさが生まれ、楽しい。しかし一方で、競争心が芽生えるために、ゆっくりと観察できなくなる欠点がある。そのため、適切な対応方法はいちがいに言えない。

4 パートナーによる終了解説
4-1 問いかけによるふりかえり作業
 問いかけの目的は自然体験の「ふりかえり効果」を期待するものである。終了解説は発見の瞬間を思い浮かべてもらうことにより、その経験を記憶として残してもらうことが目的とする。「どんな○○だった?どこにあったの?」というように、その瞬間を説明させ、複数人でその時の様子を共有化する。
 この際、参加者の発見を大事にする。発見したものに対する観察(考察)結果が、たとえ科学的に(生物学的に)間違ったものであっても、その場ですぐに否定しないことが大事である。観察結果の解釈ではなく、発見した事実が重要なのである。この場合、やや時間をあけて、「ひょっとすると、さっき言っていた、あなたが発見した○○は・・・かもしれないね。」などと説明する。そして、こちらが気づかなかった点を参加者が指摘した場合は、その情報を大事にして、博物館で共有することを伝え、感謝する。

4-2 関連情報の提供
 問題や回答にでてきた自然現象に関する周辺の情報や、より深い解説を行う。これにより、観察したものの理解を深めてもらう。ただし、過大な情報提供は、かえって発見の感動を薄めてしまうことになる危険性があるので注意する。たいていの場合、一言つけくわえるだけでいい。

・解けない設問があった場合
 参加者それぞれが、自分の選択によって、自分のペースで体験シートをこなし、独自の自然の見方(対象の選びかたや観察の仕方)で自然体験をしてもらうことが、この事業の目的である。なので、すべての設問に答える必要はなく、解けなかった場合でも、他の体験を行うことができればいいことを伝える。特に時間がなくて、他の問題にとりくんでいたために解けなかった場合は、そちらの経験の方が大事なので、そちらをほめる。いずれにせよ、解けないという事実は参加者に不満感を持たせることになるので、必ずフォローする。
 フォローの一つの方法としては、ヒントをあたえ、もう一度見てくることをすすめるのもよい。また、時間がなさそうな時は、「今度来たときにやってみてよ。」と、再来園を促す。この場合でもスタンプは押す。
 
5 登録作業
 この企画が初めての人には、以下の再訪レベルの企画説明をして、希望者の登録作業をする。

・再訪レベルの説明
 「他の日に何度か来れますか?もし来れるのであれば、他のシートもやって、スタンプをためてみない?スタンプが5つたまると、このペーパークラフトをあげるよ。森の調査隊の実施は土日と夏休みなので、楽しみにまっててね。期限は1年間なので、時間のあるときにゆっくりやってみてね。」
・表紙と綴じ金具を配布する。
・今日の日付と名前を書かせる。
・控えに名前、学校名、今日やったシートの種類を記録する。
・スタンプカード「スタンプの池」の配布押印
    どの種類のスタンプを、どの場所に押すかは参加者の自由。
・「今日、楽しんだことを他の学校の友達におしえてあげてね。」のひとこと。

6 解説のための周辺情報の収集
 パートナーは、初心者(あるいは子ども)にもどって、全シートを自ら解く。その経験は終了解説に生かされる。また、聞かれそうな質問は前もって、職員に聞くようしてもらう。この際、文書で質問・回答を保存する。

以上