千葉県立中央博物館 


 変更履歴 070328 展示紹介・4月以降の行事等 追加

turugi.jpg 「南からの剣沢と剣岳」 五百沢智也作

 背景に、氷河時代以来の侵食により尖峰となっている、北アルプスの剣岳本峰を描き、前景には、剣沢の圏谷地形(カール氷河の侵食跡や氷河のモレーンなど)と、後氷期に剣沢源流の下刻により小さなV字谷ができて圏谷底が侵食されつつある様子などが活写されています。
雑誌「岳人328号(1974)」(東京新聞出版局)および「鳥瞰図譜・・日本アルプス」(講談社、1979)に掲載
春の展示 山の科学画 展  
会期:平成19年3月3日 (土) 〜 5月27日 (日)
会場:千葉県立中央博物館
主催 千葉県立中央博物館  協力 寒冷地形談話会
後援 国土地理院 (財)日本地図センター 日本国際地図学会 (社)日本地図調製業協会
千葉県生涯学習フェステバル協賛事業
山の科学画展の趣旨 山岳鳥瞰図、氷河地形、五百沢智也氏
 鳥瞰図とはまさにその名の通り、鳥が空の一点から地上を斜めに見下ろしたような図で、地形景観や都市景観を表現する方法として、古くから利用されてきました。
 鳥瞰図は単なる地図ではなく、絵心がないと作れない絵画でもあり、その中で表現しようとする主題が必ずあります。
 氷河地形研究者であり、山岳鳥瞰図作家として知られる五百沢智也氏(千葉県一宮町在住)は、1970〜1980年代にかけて、山岳雑誌「岳人」(東京新聞出版局)や「山と渓谷」(山と渓谷社)などに、日本アルプスやヒマラヤの鳥瞰図を連載してきました。
 また1979年には、これらの中の氷河作用を受けた山、火山活動でできた山を意味する「氷の山、火の山」シリーズをまとめ、「鳥瞰図譜=日本アルプス」(講談社)を出版しました。
 これらの鳥瞰図は、地形を見る確かな眼と、飛行機から自分で撮影した斜めのステレオ写真を実体視(立体的に見ること)する技術に基づいて描かれており、臨場感のある絵画として、また山岳地形、氷河地形の客観的な記録として、高く評価されています。  パソコンで世界中の地形を鳥瞰できるようになった昨今でも、これらの作品は、山のすばらしさを多くの人々に伝えてくれます。
 平成19年3月3日から開催予定の「山の科学画」では、槍・穂高連峰や鹿島槍ヶ岳など、鳥瞰図譜に掲載された日本アルプスの山岳鳥瞰図の原画を系統的に展示し、その描き方や氷河地形の解説を加えて紹介します。

 このほか、「房総半島の地形を主題にした鳥瞰図や地形模型」、地表面の形状を地性線のみで描いた「日本列島地貌図」、山座同定に役立つ「山の似顔絵式展望図」なども展示します。
 これらを通して、ふだん何気なく見ている「風景」が、大地のさまざまな営みによって長い時間をかけて造られてきた「地形」であるということを伝えられればと思っています。
 展示する五百沢氏の作品例
  日本アルプスと氷河地形研究関連の山岳図 (第1展示室)
 以下の作品は、1970年代に山岳雑誌「岳人」(東京新聞出版局)に連載された「氷の山・火の山シリーズ」のために描かれたもので、このシリーズはその後「鳥瞰図譜=日本アルプス」(講談社)として出版されました。
 いずれも臨場感のある絵画として、また山岳地形や氷河地形の客観的な記録として、高く評価されています。これらの作品を描くのに最も重要な役目を果たしたのは、二枚の空中写真を実体視(立体的に見ること)して観察することです。この技術を使うと、一枚の空中写真や飛行機からの肉眼による観察では得られない多くの情報を得ることができます。


 「鳥瞰図譜=日本アルプス」まえがきより ・・・・『地形の観察は、少し離れたところから大局的に全体を見ることと、その地形を作る大事な場所を、表層地質や微細な地表面の様子に至るまで詳しく見ることの両面が必要である・・・略・・・この本に示す図の多くは、筆者が飛行機からステレオになるように撮影した写真をもとにしたもので、地上では得られない自由なアングルを持っている。』
 
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「黒部五郎岳東カールとその下流」
雑誌「岳人」(東京新聞出版局)の連載のために描かれたもので、「鳥瞰図譜=日本アルプス」(講談社)に掲載
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 「穂高の涸沢と岳沢」  五百沢智也 作 
 雑誌「岳人」(東京新聞出版局)の連載のために描かれたもので、「鳥瞰図譜=日本アルプス」(講談社)に掲載
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 「槍・穂高連峰」 五百沢智也 作
 
雑誌「岳人」(東京新聞出版局)の連載のために描かれたもので、「鳥瞰図譜=日本アルプス」(講談社)に掲載
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「北西方向から見下ろした富士山」 五百沢智也 作 
 雑誌「岳人」(東京新聞出版局)の連載のために描かれたもので、「鳥瞰図譜=日本アルプス」(講談社)に掲載 
 ネパールヒマラヤの山岳鳥瞰図 (第2展示室)
 五百沢氏は、世界一の大山脈と、そこに含まれる険しい峰々が、どんな力でどんな風につくられてきたかを明らかにしたいと考え、その第一歩として、広大で複雑な未知山域を記録していくため、飛行機からネパールヒマラヤ全域の斜め空中写真を撮影し、7回のフライトを行った。
 その写真を実体視判読することで、山や氷河の携帯を詳細に描いた図です。
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「ジュガールヒマール」 五百沢智也 作 
 ネパールの首都カトマンズの北にある山群。左手奥に、シシャパンマ(ゴサインタン)8013mがみえる。
 雑誌「岳人」(東京新聞出版局)の連載のために描かれたもの
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「ヤマタリ氷河上空からみたジャヌー(左)とカンチェンジュンガ(中央)」 五百沢智也 作 
 テレフォンカードの図案用にペン画を彩色
 似顔絵式山岳展望図
「ネパールヒマラヤ全山展望図(一部)」
 1976年、山と渓谷社より出版した「ヒマラヤトレッキング」に掲載された「アンナプルナとダウラギリ鳥瞰図」を1986年に描き直したものの一部です。ネパールの山岳飛行で、山座同定に役立つ特徴をとらえた似顔絵式展望図が必要と考え、作成したものです。  
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「ネパールヒマラヤ全山展望図(一部)」   五百沢智也 作 (原画より
 日本列島地貌図
 「日本の自然 地域編」(岩波書店)の全8巻の巻頭を飾った日本列島の各地方ごとの地貌図です。
 地貌図というのは、地表面の形状、つまり山の高さや起伏、あるいは斜面の状態などがわかるように描いた地図のことですが、この作品はほとんど地性線のみで構成されています。
 展示では各地方をつないだ集成版「日本列島地貌図」として紹介する予定です。   
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 「日本列島地貌図 関東地方」 五百沢智也 作(原画より)
 「日本の自然 地域編3 関東」(岩波書店)のために作図、表紙カバーに掲載
 房総半島の地形を主題にした鳥瞰図
 「千葉県地形鳥瞰図」
 巨視的な視点から房総半島及びその周辺の地形を描いたものです。
 千葉県の関宿付近に視点を置き、図の中心が九十九里浜の片貝や大網白里方向に来るように設計されています。そのため普通の地図とは逆の方向から千葉県を見るようになっています。
 また地球の丸みを誇張した太平洋の海面を図の上方に置くことで、地球の上にある千葉県を表現しており、意表を突く構図となっています。
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 「千葉県地形鳥瞰図」  五百沢智也 作(原画より)
 企画展「鳥の眼から見た房総半島−鳥瞰図の楽しみ−」(1995年)のために描かれたもので、 原画は中央博物館が所蔵
 「牛久−東金崖線地形鳥瞰図(千葉市昭和の森公園周辺)」
 1995年に開催された企画展「鳥の眼から見た房総半島−鳥瞰図の楽しみ−」に合わせて、千葉市昭和の森公園周辺の崖地形を主題に描いた鳥瞰図です。この図は国土地理院の2.5万分の1地形図の等高線を一定量ずつ上方にずらしながらトレースしたものを基図に、空中からの観察や現地調査によって地形を細密に表現しています。   
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「牛久−東金崖線地形鳥瞰図(千葉市昭和の森公園周辺)」 五百沢智也 作(原画より)
 企画展「鳥の眼から見た房総半島−鳥瞰図の楽しみ−」(1995年)のために描かれたもので、 原画は中央博物館が所蔵
 展示室の様子を紹介
tenzisitu03.JPG● 第1展示室(五百沢式鳥瞰図の作成法・日本アルプスほかの鳥瞰図)、
● 第2展示室(ヒマラヤの鳥瞰図)、
● スケッチ展示コーナー の3箇所に展示しています。
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 (画像説明) 第1展示室 ・スケッチコーナー・外看板
 なお、山の科学画展会場での写真撮影は、スナップ程度でしたら自由です。
tenzisitu04.JPG<展示の見え>

1枚の鳥瞰図につき、印刷図、ペン画の原図、空中写真、印刷図の拡大図のセットにして展示しました。
 手前に印刷図、原図(立ててある)、壁面に拡大図が展示してあります。

 原画・スケッチ画等約200点以上を展示しています
tenzisitu07.JPG<拡大図のようす>

北アルプスの白馬鑓ヶ岳周辺。 パネルの大きさが大体90cm×180cmぐらいです。
かなり迫力あり。

 こんな拡大図が、日本アルプスとヒマラヤで約35枚。

 なお、五百沢氏のおもな著作もコピーしてありますので、著作コーナーにて読むことができます。
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<地貌図>
 五百沢氏の作成した日本列島の地貌図は、原図を150%拡大した図で、仔細に見ることができます。
 
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列島の集成図をこの展示のために新たに編集して展示しました。

原図からだいぶ縮小しましたが、それでも、縦が90cm、横が240cmぐらいあり、大きいです。
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<図に描かれた氷河地形の解説>

  南アルプスの千丈岳
拡大した鳥瞰図の上で、氷河地形がどこにどんなふうにあるか図示した解説図をつけました。

見比べてみると、いろいろ発見があって、面白いです。

手は、解説ボランティアさんの手。いろいろ聞いてください。
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<山の科学画展解説ボランティアの方々>

 ほぼ毎日、解説ボランティアの方々が絵の見所をご紹介しようということで、待機しています。ご気軽にお声をおかけください。
 
 16名おられます。ユニホーム着用か、名札をしています。
 五百沢智也氏年譜
1933年山形県山形市に生まれるiozawa00.jpg

近影 大阪府河南町弘川寺
 西行法師の墓前にて
1952年東京教育大学理学部地学科地理学専攻入学。大学在学中、日本各地の山と岩場に登る
1954年独標登高会入会
1957年大学卒業、建設省地理調査所(1960年に国土地理院と改称)に勤務。5万分の1地形図の測量、作成に携わる
1970年国土地理院退職、以後フリーとなり、調査・執筆活動を行う。 9月〜11月、第1回 ヒマラヤ行(これ以降ヒマラヤ行は13回を重ねる)
1983年「日本アルプスおよびヒマラヤ山脈における氷河地形および地誌の研究」により、第19回秩父宮記念学術賞を受賞
1995年千葉県立中央博物館企画展「鳥の眼から見た房総半島−鳥瞰図の楽しみ−」で房総半島の地形を主題にした鳥瞰図作成、展示
2004年長野県安曇村資料館で展示会「五百沢智也展 山を調べ・山を描く」開催
 現在千葉県一宮町在住
 東京地学協会、日本国際地図学会、寒冷地形談話会、日本山岳会 各会員
 主な著書に「鳥瞰図譜=日本アルプス」(講談社)、「登山者のための地形図読本」「ヒマラヤ トレッキング」「山の観察と記録手帳」(以上 山と渓谷社)、「岩波ジュニア新書 新・歩いて見よう東京」(岩波書店)などがある
  会期
 平成19年3月3日 (土) 〜 5月27日 (日)  月曜休館
 ただし 4/30(月祝)は開館します。
  入場料
 一般 300円 高・大学生 150円
 中学生以下および65歳以上(年齢を示すものを提示)は無料
  
団体料金、身体障害者手帳等をお持ちの方、年間パスポート等について ⇒ 詳しくはこちらです。
 関連事業
● 山の科学画展解説 :展示企画者による展示解説
    毎日曜日 4月1日、8日、15日、22日、29日、5月6日、13日、20日、27日(日)
    13:30〜14:00
● 寒冷地形談話会シンポジウム「五百沢智也と氷河・氷河地形研究」
  4/21日(土)、 4/22日(日) 13:00〜16:30ごろ
   講堂および研修室 200名まで。聴講自由。入場無料
   主催:寒冷地形談話会。協力:千葉県立中央博物館 終了しました
   詳しくは、寒冷地形談話会のWPをご覧ください ⇒ こちら    
 
● ミュージアムトーク(研究員による「山の科学画」展解説) 終了しました 
3月10日(土) ・3月24日(土)14:30〜15:00
● 講演会 「山の科学画−山を調べ・山を描く−」 講師:五百沢智也 終了しました
3月18日(日)13:30〜15:00
● 講座  「山の科学画を作る−山の画像を作る−」 終了しました
3月21日(祝)10:00〜15:00(事前申込)
 開館時間
 午前9時から午後4時30分まで(入場は午後4時まで)
 交通案内   くわしい交通案内はこちらへ 
○電車・バスをご利用の場合
千葉駅(JR総武線・京成線)から
東口7番乗り場[時刻表] 京成バス「大学病院」「大学病院・南矢作」行きのいずれかに乗り,「中央博物館」で下車(所要時間約15分),徒歩約7分.
東口6番乗り場[時刻表] ちばシティバス「川戸都苑」行きに乗り,「中央博物館」で下車(所要時間約15分),徒歩約7分.
東口2番乗り場 [時刻表] 千葉中央バス「中央博物館」行きに乗り約20分.終点「博物館・文化ホール」で下車し,徒歩1分.
蘇我駅(JR京葉線・内房線・外房線)から
東口2番乗り場 [時刻表] 小湊鐵道バス・千葉中央バス「大学病院」行きに乗り,「中央博物館」で下車(所要時間約15分),徒歩約7分.
千葉寺駅(京成千原線)から
1番乗り場 [時刻表] 「大学病院」行きに乗り,「中央博物館」で下車(所要時間約5分),徒歩約7分.
車をご利用の場合
京葉道路「松ヶ丘」インターから約5分.

  問い合わせ先:千葉県立中央博物館 地学研究科(担当:八木)
〒260-8682 千葉市中央区青葉町 955-2
電話 043-265-3111(館代表),FAX:043-266-2481

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