干支(えと)にちなむ貝−丑年−
2009年1月6日(火)〜31日(土)
2階ホール(入場券売り場前の広間)階段側

これまで、9年間、干支にちなんだ名前をもつ貝類を紹介してきました。
2009年の干支は丑(ウシ)です。当館の二宮コレクションや品川コレクションなどの中から、ウシに関係する名前の貝を紹介します。ウシにちなんだ名前を持つ貝は、比較的少なく、方言名なども参考にしました。名前の由来は、ウシの体の一部や形のイメージから名付けられています。
1.ウシノツノ(牛の角[貝])
Terebra areolata オーストラリア産
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細長い殻を「牛の角」に見立てて、名付けられたようです。サンゴ礁の浅い砂地に生息し、海底にすむ“ながむし類(ギボシムシ類)”を餌としているようです。千葉県から未だ本種の記録はありませんが、「地球温暖化」により、この種が得られる日が来るかもしれません。
2.マンボウガイ(万宝貝)
Cypraecassis rufa  フィリピン産
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この貝の英名を、Bullmouth helmet と言います。bullは牡牛、mouthは口のことで、貝の殻口が牛の口に似ているところから名付けられたようです。helmetは、頭にかぶるヘルメットのことで、この仲間の形がヘルメットのようなところに因んでいます。沖縄地方を含めた日本では、実際にマンボウガイを採集することはかなり難しく、稀な種と言えます。この貝はウニ類を食べています。本種を加工した装飾品の「カメオ」は、この貝の表面を削って、あの独特な色を出しています。カメオに用いられる本種は、東アフリカから運ばれているようです。
3.うしのつめ(牛の爪:マツバガイ)
Cellana nigrolineata  千葉県産と高知県産
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外房の磯でよく見かけるカサガイの仲間で、殻の模様に変異があり、その一部のものに対して、「うしのつめ」という方言名が付けられています。ただ、どこが牛の爪に似ているのか?という疑問もあります。マツバガイの名は、表面に「松の葉」のような褐色のスジがあることに由来します。カサガイ類は、1枚の貝殻しかありませんが、体には触角や足があり、巻貝の仲間です。
4. うしのつめ(牛の爪:アマオブネ)
Nerita albicilla  千葉県産
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外房の磯でよく見かける小形の巻貝で、館山の方言名として「うしのつめ」が記録されています。殻が硬く、少し盛り上がっているところから名付けられたのでしょうか。
5.もーもー(タカラガイ類:ホシダカラ)
Cypraea tigris  ハワイ産
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昔の沖縄地方では、タカラガイ類のことを「もーもー」や「もーもーぐゎー」と呼び、子供の遊具になっていました。タカラガイ類を牛に見立てた方言名は和歌山県でも記録されています。
牛のことを「べこ」とも呼びますが、べこに由来する方言名も、アメフラシに見られる程度で、貝には少ないようです。分館海の博物館(勝浦市)では、ウミウシ(海牛)類の写真を展示しています。併せて、ご覧いただければと思います。

参考文献:アボット・ダンス(波部・奥谷訳). 1985. 世界海産貝類大図鑑, 平凡社.;川名興. 1988. 日本貝類方言集, 未來社.
(動物学研究科/黒住耐二)