| 千葉県立中央博物館 平成18年度企画展 |
![]() |
| 深海生物企画展トップページに戻る |
| 展示品の一部紹介 |
| 「目玉展示の数々」から |
| (目玉展示の数々1) | リュウグウノツカイ | 8月7日UP |
| (目玉展示の数々3) | ヨミノアシロ vs シンカイクサウオ | 6月27日UP |
| (目玉展示の数々7) | オニボウズギス | 6月27日UP |
| (目玉展示の数々8) | フクロウナギ | 6月27日UP |
| (目玉展示の数々12) | テンガンムネエソ | 6月27日UP |
| (目玉展示の数々16) | カイロウドウケツとドウケツエビ | 7月14日UP |
| (目玉展示の数々19) | スケイリーフット | 8月20日UP NEW! |
| (目玉展示の数々23) | カイコウオオソコエビ | 6月20日UP |
| (目玉展示の数々26) | トゲヒラタエビのなかま | 8月12日UP |
| (目玉展示の数々27) | フクレツノナシオハラエビ | 6月20日UP |
| 「目玉展示番外編」から |
| (目玉展示番外編a) | ダイオウイカ | 7月19日UP |
| (目玉展示番外編b) | ニュウドウカジカ | 7月19日UP |
| (目玉展示番外編c) | さかなクン特製,ホンフサアンコウのはく製 | 7月19日UP |
| (目玉展示番外編d) | タウマティクチス | 8月1日UP |
| (目玉展示番外編e) | デメニギスのなかま | 8月1日UP |
| (目玉展示番外編f) | デメエソのなかま | 8月1日UP |
| (目玉展示番外編g) | ボウエンギョのなかま | 8月1日UP |
| (目玉展示番外編h) | ワニトカゲギスのなかま | 8月7日UP |
| (目玉展示番外編i) | カブトウオのなかま | 8月7日UP |
| (目玉展示番外編j) | シーラカンス | 8月7日UP |
| 全長5mもある魚 リュウグウノツカイ |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() 図1.リュウグウノツカイ標本頭部 |
![]() 図2.吊り上げられた標本を下から見上げる |
![]() 図3.別の角度から.下はダイオウイカのレプリカ, 奥はテンガイハタとカグラザメのはく製 |
![]() 図4.第一会場入口のイメージオブジェ. 手前はオオグソクムシ,オニキンメ,コウモリダコ |
| 分類 脊索動物門 Chordata 軟骨魚綱 Chondrichthyes アカマンボウ目 Lampridiformes リュウグウノツカイ科 Regalecidae リュウグウノツカイ属 Regalecus リュウグウノツカイ Regalecus glesne |
| 体長 7 mに達する |
| 分布域 日本周辺の海・北大平洋・インド洋 |
| 生息水深 中深層 |
| 和名の由来 日本に古くから伝わる龍宮は,日本各所に残る海神にまつわる伝説に登場する海神の宮のことです.リュウグウノツカイという和名は,その名の通り「龍宮からの使者」にたとえたもので,その神秘的な姿をよくとらえています.世界各地に伝わる人魚伝説や大海蛇伝説のもとになったのも,その一部はリュウグウノツカイではないかと言われています. なんのなかま? 体型的には似ても似つかぬアカマンボウに近縁です.分類学的にはアカマンボウ目,リュウグウノツカイ科に属します.二つの学名が使われていますが,一種 (Regalecus glesne) しかいないと言われています. どれくらい大きくなるのか? 確かな記録と標本があるものとしては,1996年10月にアメリカ・南カリフォルニアのアメリカ海軍基地に打ち上げられたものが全長7.2mで一番大きいようです.日本では5mクラスのものが最大のようで,この剥製(全長5.2m)も大きいものの一つでしょう. この標本は,1990年10月に神奈川県小田原市の早川沖に仕掛けられた定置網に混獲されたもので,当時の神奈川県立生命の星・地球博物館開設準備室に寄贈されました. |
| このページの先頭に戻る |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() ヨミノアシロ |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes アシロ目 Ophidiiformes アシロ科 Ophidiidae ヨミノアシロ属 Abyssobrotula ヨミノアシロ Abyssobrotula galatheae カサゴ目 Scorpaeniformes クサウオ科 Liparidae Pseudoliparis 属(和名なし) シンカイクサウオ Pseudoliparis amblystomopsis |
| 体長 ヨミノアシロ 約15 cm シンカイクサウオ 約20 cm |
| 分布域 ヨミノアシロ 熱帯〜亜熱帯海域の全海洋 |
| 生息水深 ヨミノアシロ 3110-8370 m シンカイクサウオ 6000 m以深 |
| ヨミノアシロとシンカイクサウオは,水深 6000 メートルを超える海溝にすむ数少ない魚です. ヨミノアシロはアシロ目という約 400 種を含む分類群に属します.アシロ目は深海に適応した種を多数含んでおり,いまだに新種が多数発見されます. 一方,シンカイクサウオはカサゴ目のクサウオ科という分類群に属します.日本周辺海域からの学術的な報告がないため,未だに日本の魚類図鑑にも載っていません. |
| このページの先頭に戻る |
| 自分よりも大きい餌を呑み込んだ オニボウズギス |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() オニボウズギス |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes スズキ目 Perciformes クロボウズギス科 Chiasmodontidae オニボウズギス属 Chiasmodon オニボウズギス Chiasmodon niger |
| 体長 約15 cm |
| 生息水深 200-1000 m |
| クロボウズギスのなかまは外洋の中・深層 (水深200〜1000m) に生息します.いずれも鋭い歯をもち,口が大きく,自分より大きなエサを丸呑みすることで有名です. 上の写真のオニボウズギスは,インドネシアのフローレス海で採集された標本です.通常は白線で示されるようなスリムなボディーをもっていますが,エサを丸呑みすると胃が拡張してこのような姿になります. このようにエサを丸呑みしたままの標本は珍しいため,胃内容物を取り出していませんが,おそらくイカのなかまを呑み込んだものと思われます. |
| このページの先頭に戻る |
| 腹まで裂けた巨大な口をもつ フクロウナギ |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() フウセンウナギ属の一種 |
![]() フクロウナギ |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes フウセンウナギ目 Saccopharyngiformes フウセンウナギ科 Saccopharyngidae フウセンウナギ属 Saccopharynx フウセンウナギ属の一種 Saccopharynx sp. フクロウナギ科 Eurypharyngidae フクロウナギ属 Eurypharynx フクロウナギ Eurypharynx pelecanoides |
| 体長 フクロウナギ 100 cmに達する |
| 分布域 フクロウナギ 東太平洋(カリフォルニア北部からペルー) |
| 生息水深 フクロウナギ 500-7500 m |
| 深度 1000 m より深い中・深層に生息するもっとも風変わりな深海魚の一つです. 最近の DNA を用いた分子系統学的研究 (Inoue et al. 2003) により,ウナギ目の内部から進化してきたグループであることがわかりました. フウセンウナギもフクロウナギも,喉を通り越して腹まで裂けた口が特徴的です.目の前にきた獲物がどんな大きさでも,とりあえず呑み込んでしまえという戦略だと考えられます. |
| このページの先頭に戻る |
| 上を向いて暮らす魚 テンガンムネエソ |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() ナガムネエソ |
![]() トガリムネエソ |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes ワニトカゲギス目 Stomiiformes ムネエソ科 Sternoptychidae テンガンムネエソ属 Argyropelecus ナガムネエソ Argyropelecus aculeatus トガリムネエソ Argyropelecus affinis |
| 体長 ナガムネエソ 約5 cm トガリムネエソ 約5 cm |
| 分布域 ナガムネエソ 熱帯〜温帯水域 トガリムネエソ 熱帯〜温帯水域 |
| テンガンムネエソ属 (Argyropelecus) を上から見ると,口も眼も上を向いていることがよくわかります.上を泳ぐ小さな動物プランクトンを見つけ,下からパクッと呑み込むのでしょうか. また,彼らを下から見ると,発光器が腹側にずらっと並んでいることがわかります.みずから光ることにより,われわれが逆光でなにも見えなくなるのと同じ状態をつくりだし,捕食者の目から逃れていると言われています. |
| このページの先頭に戻る |
| 愛の牢獄? カイロウドウケツ とドウケツエビ |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() 図1.ヤマトカイロウドウケツの全体 鹿児島県枕崎沖水深300 mで採集された標本 解説文に |
![]() 図2.ヤマトカイロウドウケツの頂上部 細かな編目状の外皮に注意 解説文に |
![]() 図3.ヤマトカイロウドウケツの胃腔に生息するヒメドウケツエビ 解説文に |
![]() 図4.人工カイロウドウケツで飼育中のヒメドウケツエビ 解説文に |
| 分類 海綿動物門 Porifera 六放海綿綱 Hexactinellida リッサキノサ目 Lyssacinosida カイロウドウケツ科 Euplectellidae カイロウドウケツ属 Euplectella属 ヤマトカイロウドウケツ Euplectella imperialis Ijima, 1894 節足動物門 Arthropoda 甲殻上綱 Crustacea 軟甲綱 Malacostraca 十脚目 Decapoda オトヒメエビ下目 Stenopodidea ドウケツエビ科 Spongicolidae ドウケツエビ属 Spongicola ヒメドウケツエビ Spongicola japonica Kubo, 1942 |
| 体長 ヤマトカイロウドウケツ 大きな個体では80 cmに達する ヒメドウケツエビ 約30 mm |
| 分布域 ヤマトカイロウドウケツ 相模湾〜鹿児島県沖 ヒメドウケツエビ 駿河湾〜鹿児島県沖 |
| 生息水深 150〜1000 m |
| カイロウドウケツという生物 カイロウドウケツ類は六放海綿綱六放星目に分類されるカイメンの仲間です.ヤマトカイロウドウケツEuplectella imperialis Ijima, 1894やオウエンカイロウドウケツEuplectella oweni Herklot and Marshal, 1868などの種類が知られています. かごの正体はガラス! カイメンの体は,多くの骨片から形作られていますが,その骨片には石灰質のものと硅質のものがあります.六放海綿類の骨格は珪質なので,ガラスカイメンと呼ばれることもあります. カイロウドウケツ類の多くは,ヘチマのような形をしており,その下端には細い毛束のようなものがあります.この下端を海底の泥の中に埋めて,海底に直立します (図1). 外皮は精密なかご網状になっていますが,内部(胃腔といいます)は空洞となっています.形の面白さや,精密なかご状の外皮を持つため,欧米では「ヴィーナスの花かご」と呼ばれ,装飾品として珍重されていました (図2). 六放海綿類には深海性種が多く,ドレッジやトロールなどの採集器具を用いて海底の調査を行うとよくとれますが,骨片が鋭く,素手で触ろうものなら細かな骨片が刺さり,大変痛い思いをします.作業には軍手やゴム手袋を欠かすことができず,トロールやドレッジ調査ではあまり歓迎されない生物です. カイロウドウケツ=「偕老同穴」 名前のカイロウドウケツですが,漢字で書くと「偕老同穴」です.どういう意味かといいますと,「偕(とも)に年をとり、同じ墓に葬られる」の意味です。つまり、夫婦の愛情が長く続くことをいいます.でも,どうしてカイメンが夫婦愛を連想させるんだ?と思いませんか? 実は最初はカイメンの名前ではなく,カイメンの中に住んでいるエビの名前でした.どういうわけか,いつのまにかカイメンの名前になってしまいました. 先にカイロウドウケツの中は空洞と述べましたが,この空洞にエビは住み着きます (図3).エビは十脚目オトヒメエビ下目のドウケツエビ科Spongicolidaeに属します.ドウケツエビ科には世界で5属約30種が知られていますが(現時点),サンゴヒメエビ属Microprosthemaをのぞき,全種が六放海綿類に片利共生します. ドウケツエビ科の特徴 現在,筆者らの共同研究により,ドウケツエビ科の分類の再検討が進められています.かなりの数の未記載種が存在することがわかっています. ドウケツエビ科の一般的な形態の特徴としては,第3対目の胸脚が大きなはさみとなることや,歩脚の指節の先端が二またに分かれて,カイメンの繊維をつかみやすくなっていることなどがあげられます(図4). また,オトヒメエビ下目のエビは体表が細かな棘でおおわれることが多いのですが,ドウケツエビ科では特殊化が進むほど,棘がなくなる傾向があります.カイメンの中での生活には鋭い棘など不要なのでしょう. とらわれの身で一生を過ごす ドウケツエビ類はオスメスつがいで一生をこのカイメンの中で過ごします.カイメンの外皮は細かなメッシュとなっており,大きな穴や隙間がないので,エビの成体は一生外に出ることはありません.エビにとって,カイメンは天敵の攻撃を寄せつけない,堅固な要塞のようなものなのかもしれません. ドウケツエビの子供は,ほかのエビやカニと同様,ゾエア幼生と呼ばれ,プランクトン生活を送りますが,孵化した直後にカイメンのメッシュの隙間から外に出るものと考えられます. 後期幼生まで成長した段階で再びカイメンの表面のメッシュの隙間からカイメンの内部に入り込みます.その後成長すると,メッシュをくぐれなくなり,一見閉じ込められたような状況になります. エビの食物はカイメンの胃腔内に取り込まれた懸濁粒子やプランクトンです.なかなかちゃっかりしてます. エビの三角関係? 実際には3個体以上がひとつのカイメンにすんでいることもあるらしいのですが,その場合,人間関係,いやエビ関係はどうなるのでしょうか.三角関係がおこるかも? それにしても,夫婦仲良く添い遂げるエビ,うらやましい?ものです.海綿が愛の牢獄なんてとんでもない! |
| このページの先頭に戻る |
| 鉄のよろいをもつ巻き貝 スケイリーフット |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() 図1.スケイリーフット.貝殻(反殻口側) 解説文に |
![]() 図2.スケイリーフット.貝殻と腹足の一部 解説文に |
![]() 図3.スケイリーフット.貝殻と腹足の裏側 解説文に |
![]() 図4.スケイリーフットの腹足上にある,硫化鉄でできた鱗 解説文に |
| 分類 軟体動物門 Mollusca 腹足綱 Gastropoda 系統的位置不明(現在研究中) スケイリーフット(ウロコフネタマガイ) |
| 体長 殻径約4cmに達する |
| 分布域 インド洋中央海嶺ロドリゲス三重合点かいれいフィールド |
| 生息水深 2450 m |
| スケイリーフット−21世紀になって発見された珍奇な巻貝 スケイリーフットはインド洋中央海嶺の熱水噴出域で発見された巻貝の1種です.最初に発見したのはアメリカの調査チームで,2001年のことです. まだ正式に命名・記載されていないので,系統的な位置も明らかではありません. 名前のスケイリーフットは通称名で,英語のscaley(鱗で覆われた)+foot(足)を組み合わせた造語となっています. 鉄の鱗で覆われた足! 本種の貝殻自体は黒褐色で,わりと平凡なタマガイ形をしています (図1)が,特徴は何と言っても硫化鉄の鱗で覆われた腹足部でしょう(図2).鉄を含んだ化合物を対外に分泌し,構造物とする生理的特性をもった動物はほとんど知られておらず,その点でまさに驚異的な生物といって良いでしょう. この硫化鉄の鱗(図4)は磁性をもつことが明らかになっています(Suzuki et al. 2006).磁石にくっつくということです. 殻に収まりきらない足 普通の巻貝は,他の生物から攻撃されたりすると貝殻の中に軟体部を収容し,腹足の背面に位置するふたをつかって殻口をふさいで防御します.しかし,スケイリーフットは,腹足を完全に貝殻の中に収容することができません(図3).はみ出した部分がちょうど鉄の鱗で覆われているということになります.生息環境中にはロドリゲスユノハナガニなどの捕食者が存在するので,捕食者からの防御の機能があるのではないかという考えもあります. 消化管内に化学合成細菌が共生 また,多くの熱水性腹足類は,鰓に化学合成細菌を共生させ,栄養を得ていますが,本種の場合,鰓ではなく消化管内から共生化学合成細菌が見つかっており(Goffredi et al. 2004),その点でも熱水性種としては特異です.歯舌を備えているとも言われていますので,生息環境中のバクテリアを食べているのかもしれません. 研究はこれから 本種は現在のところ,インド洋中央海嶺ロドリゲス三重合点にあるかいれいフィールドと呼ばれる熱水噴出域(水深約2450 m)からだけ見つかっています.かいれいフィールドから約160 km離れた場所にエドモンドフィールドという熱水噴出域があるのですが,そこからはまだ見つかっていません. 本年(2006年)2月には,海洋研究開発機構,東京大学海洋研究所,新江ノ島水族館の共同調査がインド洋中央海嶺かいれいフィールドで行われ,スケイリーフットの生態調査・飼育実験がされ,大きな話題となりました. |
| このページの先頭に戻る |
| 世界一深い海にすむ カイコウオオソコエビ |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() 図1.カイコウオオソコエビ全形 マリアナ海溝チャレンジャー海淵水深10900 mより採集 海洋研究開発機構所蔵標本 解説文に |
![]() 図2.カイコウオオソコエビの頭部側面 目は完全に退化している 触角は短いが,えさのにおいを敏感にキャッチ! 解説文に |
| 分類 節足動物門 Arthropoda 甲殻上綱 Crustacea 軟甲綱 Malacostraca 端脚目 Amphipoda フトヒゲソコエビ科 Lysiannasidae Hirondellea属(和名なし) カイコウオオソコエビ Hirondellea gigas (Birshtein & Vinogradov, 1955) |
| 体長 4.5 cmに達する |
| 分布域 北西太平洋の海溝部:千島・カムチャッカ海溝,日本海溝,伊豆・小笠原海溝,マリアナ海溝,フィリピン海溝,ヤップ海溝,パラオ海溝 |
| 生息水深 6000-10900 mの泥底 |
| 海は深い 世界の海の深さを平均すると3500〜3800 mと言われています.海のほとんどは深海といっていいでしょう. その中でももっとも深い部分は,海溝と呼ばれる溝のようになった部分です.大陸プレートと海洋プレートの境目にあたる部分です.その深さは10000 mを超えることもあります. 有名な海溝としては,日本の太平洋側沖合を南北にのびる日本海溝,北太平洋北部のアリューシャン海溝,世界最深部をもつマリアナ海溝などがあります. マリアナ海溝のもっとも深い部分(チャレンジャー海淵と呼ばれる)は水深10900 mに達します. 海溝の調査は難しい 海溝内部は非常に深いため,科学的な調査を行うのは技術的に困難を極めますし,経済的にも莫大なコストがかかります. 例えば,水深10000 mでトロール調査をしたいということになると,網をひくためのワイヤーは15 km以上くり出さなければならないでしょう.トロール1回あたり丸1日費やします. そのようなことのできる研究調査船は世界でも数えるほどしかありません.先駆的な調査としてはデンマークのガラテア号,旧ソ連のヴィチャージ号によるトロール調査があり,海溝底の大型底生動物に関する私たちの知識はこれらに多くを負っています. 最近では日本の研究船白鳳丸(現海洋研究開発機構)が日本海溝や琉球海溝などでトロール調査を行ってきました. 超深海にどんな生物がいるか 一方,現存の有人潜水艇で水深6500 mより深い海溝底に達することのできるものはありません.そのような人間の手の届きがたい超深海にどのような生物が生息しているのかは非常に興味を引くものです. これまで,海溝内部に生息することが知られる動物としては,甲殻類のミズムシ類やタナイス類,棘皮動物のナマコ類,魚類がありました. 例えば,標本によって確認しうる魚類の最新記録は,西大西洋プエルト・リコ海溝で採集されたヨミノアシロAbyssobrotula galatheaeNielsen, 1977の水深8374 mです. カイコウオオソコエビの発見 海洋開発研究機構は1998年にマリアナ海溝のチャレンジャー海淵で生物の採集調査を行いました. えさ付きのわなを水深10900 mの海底に仕掛けたところ,ヨコエビの1種が採集されました.それが カイコウオオソコエビ (図1)です. 最深記録保持者,カイコウオオソコエビ カイコウオオソコエビHirondellea gigas (Birshtein & Vinogradov, 1955)はフトヒゲソコエビ科Lysiannasidaeのヨコエビです.Hirondellea属には世界で7種が知られますが,その多くが深海性です. この時の調査で採取された大型底生生物はこのヨコエビだけでした.これまでに知られている動物としては世界でもっとも深い海に生息するものといって良いでしょう. エビと言ってもエビではない エビという名前が付いていますが,十脚目のエビ類とは異なり,フクロエビ上目端脚目に分類されます. カイコウオオソコエビはヨコエビとしては大型になり,体長約4.5 cmに達します. 色は淡い茶色をしていますが,体内には黄色をしたオイルのような物質が貯えられています.このオイルのような物質は体内に貯えられた栄養分かもしれませんが,標本にすると溶け出してしまいます.そのため,標本はスカスカになってしまいます. 眼は完全に退化 眼は完全に退化し,認められません (図2). 種分化の途中? 本種は,北太平洋の千島・カムチャッカ海溝で初めて発見され,その後フィリピン海溝,日本海溝,伊豆・小笠原海溝,ヤップ海溝,パラオ海溝など北西太平洋の各地から見つかっています. 離れた海溝から採集された標本を比較した結果,わずかな形態の違いが認められるという報告もありますので,種レベルでの分化が起きているのかもしれません. 謎の生態 生態などはほとんど分かっていません. 海洋研究開発機構の調査では腐肉をえさとしたわなで採集されましたが,10000 mを超えるような海底にふだん十分な食べ物があるのでしょうか.いつもは何を食べているのでしょうか.謎に満ちています. |
| このページの先頭に戻る |
| よろいで身を固めた深海の騎士 トゲヒラタエビ のなかま |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() 図1.トゲヒラタエビ全形(生鮮標本) 解説文に |
![]() 図2.Glyphocrangon saintlaurentae全形(液浸標本) 解説文に |
![]() 図3.オーストラル諸島産未記載種Glyphocrangon sp.全形(液浸標本) 現在,新種記載論文を準備中 |
![]() 図4.腹部から尾節にかけてのロック装置.こうなるともう曲らない 標本はGlyphocrangon majorという種 解説文に |
![]() 図5.胃袋を吐き出したGlyphocrangon lineata 解説文に |
| 分類 節足動物門 Arthropoda 甲殻上綱 Crustacea 軟甲綱 Malacostraca 十脚目 Decapoda コエビ下目 Caridea トゲヒラタエビ科 Glyphocrangonidae トゲヒラタエビ属 Glyphocrangon トゲヒラタエビ Glyphocrangon hastacauda Bate, 1888 トゲヒラタエビ属の一種 Glyphocrangon saintlaurentae Komai, 2004 トゲヒラタエビ属の未記載種 Glyphocrangon sp. |
| 体長 トゲヒラタエビ 約14 cm トゲヒラタエビ属の一種(Glyphocrangon saintlaurentae) 約12 cm トゲヒラタエビ属の未記載種(Glyphocrangon sp.) 約12 cm |
| 分布域 トゲヒラタエビ 房総半島〜東シナ海北部 トゲヒラタエビ属の一種(Glyphocrangon saintlaurentae) インド洋西部,日本(日本からの記録は未発表) トゲヒラタエビ属の未記載種(Glyphocrangon sp.) 南太平洋フランス領ポリネシア オーストラル諸島海域 |
| 生息水深 トゲヒラタエビ 300〜735 mの泥底 トゲヒラタエビ属の一種(Glyphocrangon saintlaurentae) 3700〜4030 mの泥底 トゲヒラタエビ属の未記載種(Glyphocrangon sp.) 500〜1200 mの砂泥底,急峻な斜面 |
| トゲヒラタエビ科は全て深海性 トゲヒラタエビ科の既知種全てが深海性です.種によっては体長15 cmをこえることがあり,色も赤やオレンジなど鮮やか(図1)なので,深海生物の採集調査の時にも目立つ存在です.世界の海洋の温帯〜熱帯にかけて分布し,現時点で78種が知られています.現在,筆者による分類学的研究が進められており,9月に刊行予定の論文ではさらに6新種が追加されます. 最深記録は大西洋産のGlyphocrangon atlantica Chace, 1939の水深6373 mで,十脚目の中でももっとも深い水深帯に出現するものの一つです. とてもコエビには見えない形態 形態は高度に特殊化しており,ボタンエビやテナガエビなどとともにコエビ下目に分類されますが,とてもそのようには思えません.外骨格は非常に固く,さらに縦走隆起によって強化され,その上,棘や結節状突起により複雑な彫刻を施されている種類が多いです. しかし,もっとも特徴的なのは,腹部の後方3節と尾節を曲がらないように固定するロック装置でしょう(図4).このような特徴を備えたエビはほかにはいません.このロック機構は突起と溝により形成されるもので,後方3節がロックされると腹部全体がS字状に固定され,曲がらなくなってしまいます.普通のエビだと,腹部が簡単に屈曲するので,標本瓶に詰め込むのも簡単なのですが,トゲヒラタエビ類はロックしてしまうと体を曲げることができず,標本瓶に詰め込むのに難儀することもあります. なぜこのようなしくみを進化させたのかは謎ですが,もしかすると体を曲げにくくすることにより,捕食者が食べにくいようになっているのかもしれません.実際,体の前端にあたる額角と後端にあたる尾節の先端は鋭く尖っており,下手に口に入れると痛そうです. 第1胸脚はコエビ類でははさみを形成することが普通ですが,トゲヒラタエビ類では不動指を欠く,鎌のような形をしています.ゴカイなどの細長い体をもった生物の捕獲に適しているのではないかと推測しています. 眼は漸深海帯に生息する種ではよく発達しますが,深海帯に生息する種では色素がなくなります. 高度な地域固有性 これまでの研究の結果,日本,東南アジア,オセアニア海域では各種が高度な地域固有性を示すことがわかってきました.例えば,トゲヒラタエビは,以前は日本からフィリピン,インドネシアまで分布するとされていましたが,各地から収集された標本を比較した結果,日本とフィリピン,インドネシア海域では種が異なることがわかりました.フィリピン,インドネシアのものはG. indonesiensis Komai, 2004として新種記載されました. 地域固有性は漸深海帯に生息する種に顕著ですが,一方,水深3000 mを超える深海帯に生息する種は広い分布を持つものも存在することがわかってきました.今回展示しているG. saintlaurentaeの標本(図2)は和歌山県沖で採集されたものですが,本種はこれまではインド洋西部から採集された2個体だけが知られているだけでした. やはりわからない生態 トゲヒラタエビ類の生態はほとんどよくわかっていません.筆者自身,漁船や調査船に乗船し,採集してきましたが,ほとんどの場合,網が船の上に上がった時点で死んでいます.なぜか,浮き袋を持った深海魚のように,胃袋が反転して体外に出てしまうことが多いのです(図5).理由はよくわかっていません.水族館でもトゲヒラタエビ類を飼育した例を知りません. 展示室には海洋研究機構の潜水調査船「しんかい2000」が海底で撮影した写真を展示していますが,泥の上に3本の歩脚で立っている様子が撮影されています.生きているときの様子がわかる,非常に貴重なショットです. |
| このページの先頭に戻る |
| 熱水を見切る! フクレツノナシオハラエビ |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() ![]() 図1.フクレツノナシオハラエビの標本写真.大西洋中央海嶺産 上,背面;下,腹面.千葉県立中央博物館所蔵 解説文に |
![]() 図2.フクレツノナシオハラエビの正面 眼柄は左右が融合してゴーグルのようなプレート状に変形している 解説文に |
![]() 図3.生きているフクレツノナシオハラエビの頭胸部 透けて見える薄いピンク色の内臓が背器官(眼の変形したもの) フランス国立海洋研究所Ifremer提供 解説文に |
| 分類 節足動物門 Arthropoda 甲殻上綱 Crustacea 軟甲綱 Malacostraca 十脚目 Decapoda コエビ下目 Caridea オハラエビ科 Alvinocarididae ツノナシオハラエビ属 Rimicaris フクレツノナシオハラエビ(改称) Rimicaris exoculata Willimas Rona, 1986 |
| 体長 約60 mm |
| 分布域 大西洋中央海嶺の北半球側(北緯36度13分-12度57分).熱水噴出域に固有 |
| 生息水深 1750-3650 m |
| 最も特殊化の進んだエビ,ツノナシオハラエビ ツノナシオハラエビ属RimicarisWilliams Rona, 1986はオハラエビ科Alvinocarididaeに属し,十脚目コエビ下目の中でも最も特殊化の進んだエビの一つです. 現在のところ,フクレツノナシオハラエビ Rimicaris exoculata Williams Rona, 1986とカイレイツノナシオハラエビ Rimicaris kairei Watabe & Hashimoto, 2001の2種だけが知られています. 熱水噴出域に固有 両種とも深海の熱水噴出域に固有で,前者は大西洋中央海嶺,後者はインド洋中央海嶺に分布しています. 熱水噴出孔付近に何千何万ものエビが群れる様子が潜水艇の調査により観察されており,大西洋やインド洋の熱水噴出域の生物相を特徴付ける生物の一つです. 実に変わった形態 形態は実に変わっています(図1). 頭胸甲は丸くふくれ,体の両側にある鰓を収容する空間(鰓室)が大きくなっています. 体表には短い毛の束(実際は小さなくぼみの周囲に環状に毛が配列)が散在します. 眼柄は大きく変形し,左右が融合してゴーグルのようなプレート状になってしまいます(図2). 普通のエビが持っているような複眼はありません.そのため,ジェット機や新幹線の前方のような形となっています. 一部の口器の表面にはバクテリアのコロニーを伴った毛が密生します.体長60 mmほどに達します. 背器官の存在 注目すべきは,体の内部にある,眼の部分から後方に向かってのびる一対の白っぽい内臓です(図3).このような内臓はほかのエビには見られないもので,dorsal organ(背器官)と名付けられ,発見された当初から研究者の注目を集めていました. 昔は目だった背器官 詳しい研究がなされた結果,驚くべきことが分かりました.光受容物質であるロドプシンが含まれていることが判明し(人間の目だと網膜の視細胞に存在します),この内臓は目が変形したものであったことが分かったのです(Van Dover et al. 1989). ロドプシンを含む細胞はこの背器官の表面に存在します. ただし,目といっても,象をとらえることができるものではなく,光探知機ではないかと考えられています. 熱水を見切る? フクレツノナシオハラエビは水深1750〜3650 mという太陽光の全く届かない場所に生息しています.体内に内蔵された目で何を見ているのでしょうか? 仮説がいくつかありますが,そのうちの一つに,熱水から放射される微弱な光を感知することにより暗闇の中でも熱水の位置を決めることができるのではないかというものがあります(Van Dover et al. 1989). これらのエビは熱水を“見”ているのかもしれません. エビの失明 最近の研究により,訪れた潜水艇のライトのために,エビの目が失明してしまうことが分かりました.一度失明してしまうと,回復しないようです. 人間の探究心にエビたちは迷惑しているかもしれません. |
| このページの先頭に戻る |
| 地球上最大の無脊椎動物 ダイオウイカ |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() 図1.ダイオウイカArchiteutis japonica.沖縄本島沖合産 ソデイカ漁に混獲.外套長141 cm.国立科学博物館窪寺恒己氏提供 |
![]() 図2.今回展示しているダイオウイカ模型 海洋研究開発機構より借用 |
| 分類 軟体動物門 Mollusca 頭足綱 Cephalopoda ツツイカ目 Teuthida ダイオウイカ科 Architeuthidae ダイオウイカ属 Architeuthis ダイオウイカ Architeuthis spp. |
| 体長 最大のものは20 mを超えるといわれる |
| 分布域 世界中の海に生息していると考えらる |
| 生息水深 中層〜深層に生息していると考えらる |
| 最大の無脊椎動物,ダイオウイカ ダイオウイカ類Architeuthis spp.は頭足類のみならず,全無脊椎動物の中でも最大の動物です.ただし,どこまで大きくなるのかはよくわかっていません. これまでの最大の記録は,1878年にカナダ東岸ニューファンドランド島に打ち上げられた個体で,頭部と外套部をあわせた長さが6.6 m,触腕長はなんと11.5 mもあったそうです.種はおそらくタイセイヨウダイオウイカArchiteuthis dux Steenstrup, 1857ではないかと考えられます.北欧の伝説に登場する怪物「クラーケン」はこのタイセイヨウダイオウイカのことではないかと考えられることもあるようです. 混乱する分類 これほど大きな生物であるにも関わらずダイオウイカ類の分類は混乱しており,世界に何種類いるのかさえもよくわかっていません.現在のところ20あまりの学名があり,3種とする説,8種とする説などがありますが,いまだ確定していません.日本近海に産するものには暫定的にArchiteuthis japonica Pfeffer, 1912が当てられています. 研究が困難な理由としては,体が大きすぎることや,標本の保存が難しいことなどがあげられます.これほど巨大な生物になると,標本を海外の研究機関から借用するのはまず不可能です.分類学的な再検討を行うには,タイプ標本の再調査が必要となりますが,タイプ標本は世界中の研究機関に散在していることが多く,そのため,研究費の確保が大変です. さらに,これだけ大きな標本を保存するだけの設備を備えた研究機関も多くありません.検討できる標本の数も限られてしまいます. 謎に満ちた生態 ダイオウイカ類は世界の海の中層〜深層に生息していると考えられますが,標本の採集手段がなく,その生態は謎に満ちています.マッコウクジラの主な食物となっていることが知られており,そのため,個体数は私たちが想像する以上に多いということが推測されます.標本の入手の手段としては,マッコウクジラの胃内容物や,死んだ,あるいは死に瀕した個体の自然漂着が主なもので,そのため,標本の状態がよくないことが多いようです. 昨年(2005年),国立科学博物館動物研究部の窪寺恒己博士らの研究チームが,世界で初めて生きたダイオウイカの撮影に成功しました.小笠原諸島近海水深900 mでの調査により,海中につるされたえさに迫る様子が撮影されました. 残念ながら,触腕を切断して逃げてしまい,標本の確保はできなかったようです.NHKのテレビ番組でも紹介されたので,記憶に新しい方も多いのではないでしょうか.この時の観察の結果,ダイオウイカは比較的活発な捕食者であることがわかってきました. 刺身にはならない 巨大なイカなので,刺身にしたら何人前になるか想像したくもなりますが,浮力を得るため体に塩化アンモニウムを多量に蓄積していて,においが強くとうてい食べられるものではないようです. |
| このページの先頭に戻る |
| ゆでたジャガイモ? ニュウドウカジカ |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() 図1.ニュウドウカジカ正面 |
![]() 図2.ニュウドウカジカ側面 |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes カサゴ目 Scorpaeniformes ウラナイカジカ科 Psychrolutidae ウラナイカジカ属 Psychrolutes ニュウドウカジカ Psychrolutes phrictus |
| 体長 60 cm |
| 分布域 北日本太平洋〜東部太平洋 |
| 生息水深 800-2800 m |
| 静岡県焼津市の沖合,駿河湾の水深800mからカニのカゴ網漁により採集された標本です.博物館に搬入されたときは,まだ生きていました. ユーモラスなその顔は深海魚ファンにとってはこたえられないでしょう. 口から何かぶらさがって見えるのは寄生虫です.カイアシ類と呼ばれる甲殻類で,よく魚に寄生しているのが観察されます. |
| このページの先頭に戻る |
| 今回の企画展用,さかなクン特製 ホンフサアンコウ のはく製 |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() 図1.さかなクン特製,今回の企画展のためのホンフサアンコウのはく製 |
![]() 図2.さかなクンが描いたパネル2枚つきです |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes アンコウ目 Lophiiformes フサアンコウ科 Chaunacidae フサアンコウ属 Chaunax ホンフサアンコウ Chaunax fimbriatus |
| 体長 30 cm |
| 分布域 千葉県銚子沖〜東シナ海,九州パラオ海嶺 |
| 生息水深 200-500 m |
| 7月9日のトークショーでは大人気だったさかなクン.そのさかなクンがトークショーの日におみやげとして,何と!ホンフサアンコウのはく製を持ってきてくれました. 知人の漁師さんの刺し網に掛かったものをもらい受けて,今回の企画展のためにわざわざさかなクン本人がはく製にしてくれたのでした.そしてお得意のイラストによる観察記録も2枚,一緒にくださりました.展示担当が大感激したのは言うまでもありません.早速,「海洋生物大百科(魚類)」の「深海底の主役たち」コーナーに展示させていただきました. それにしてもさかなクン,本職?のイラストが上手なのはもちろんのこと,はく製づくりの腕も見事なものです.魚に関することなら何でも好きで,何でも上手なんですね. |
| このページの先頭に戻る |
| 口の中が光る! タウマティクチス |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() 図1.タウマティクチス全身 |
![]() 図2.タウマティクチス頭部 |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes アンコウ目 Lophiiformes タウマティクチス科 Thaumatichthyidae タウマティクチス属 Thaumatichthyis タウマティクチス属の一種 Thaumatichthyis pagidostomus |
| 体長 展示標本は約30 cm |
| 分布域 大西洋およびインド洋 |
| 生息水深 深海域,底層性 |
| チョウチンをもたないチョウチンアンコウ チョウチンをもってないのにチョウチンアンコウ? その代表格がタウマティクチスです.細長く上下に押しつぶされた奇妙な体型,鳥の羽のように上についた胸鰭,せり出した上顎に比べて極端に短い下顎,そして両顎には鉤のように曲がった鋭い歯が並びます.グロテスクこの上ない姿だけでも,怪魚の名に値しますが,何よりもすごいのは・・・. 口の中が光る! チョウチンがないかわりに,タウマティクチスは口の中に発光器をもっています.人間で言うと,歯茎の裏に発光器がぶらさがっていることになります.標本が入っている水槽の中の鏡を見てください. 外から口の中が見える! 口の中に発光器があってもエサを誘えるのか? その疑問に答えてくれるのが下の写真です.正面から見ると,タウマティクチスのくちびるが変形し,その中が見えるようになっています.ぼんやり光る口の中,そしてその中に,それとは知らずに誘い込まれるエサ・・・.タウマティクチスがどうやってエサを食べるのか見た人は,もちろんいませんが,いろいろと想像してみたくなりますね! |
| このページの先頭に戻る |
| 飛び出た目とオチョボ口 デメニギス のなかま |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() デメニギスのなかま |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes ニギス目 Argentiniformes デメニギス科 Opisthoproctidae デメニギス属 Macropinna デメニギス Macropinna microstoma クロデメニギス属 Winteria クロデメニギス Winteria telescopa ヒナデメニギス属 Dolichopteryx ヒナデメニギス属の一種 Dolichopteryx sp. |
| 体長 デメニギス 約10 cm クロデメニギス 約15 cm |
| 分布域 デメニギス 北太平洋亜寒帯域 クロデメニギス 世界中の熱帯〜温帯海域 |
| 生息水深 デメニギス 中層 クロデメニギス 400-2500 m |
| デメニギス科はニギス目に属する深海魚で,世界の海から6属11種が知られています. その名の通り眼が筒状になって飛び出していますが,その飛び出し方は種によって異なります.真上を向くデメニギス,斜め上を向くクロデメニギス,四つの眼をもつヒナデメニギス,いずれの種もスポイト状の口をもっているので,小さな動物プランクトンを吸い取るように捕食するようです. |
| このページの先頭に戻る |
| 飛び出た目と大きな口 デメエソ のなかま |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() デメエソ属の一種 |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes ヒメ目 Aulopiformes デメエソ科 Scopelarchidae デメエソ属 Benthalbella ツマリデメエソ Benthalbella dentata デメエソ属の一種 Benthalbella sp. デメエソダマシ属 Scopelarchus ミカエルデメエソ Scopelarchus michaelsarsi ギュンターデメエソ Scopelarchus guentheri デメエソダマシ Scopelarchus analis |
| 体長 ツマリデメエソ 展示標本は約35 cm デメエソダマシ属 展示標本は約10-15 cm |
| 分布域 ツマリデメエソ 北東太平洋 デメエソダマシ属 熱帯〜温帯海域 |
| 生息水深 ツマリデメエソ 100-3400 m デメエソダマシ属 漸深海帯〜中・深層 |
| デメエソ科は13科42属約240種からなるヒメ目に属する深海魚です.エソ科を除くと,ヒメ目のほとんどが深海にすんでおり,中・深層から漸深海帯の深海底まで幅広い環境に適応していることが特徴です. デメエソ科は4属17種からなり,いずれも眼が上を向いています.テンガンムネエソやデメニギスのなかまと異なり,デメエソのなかまは鋭い歯と大きな口をもつので,比較的大きい甲殻類や魚を食べているのではないかと言われています. |
| このページの先頭に戻る |
| 親は双眼鏡のような目,子は普通の目 ボウエンギョ のなかま |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() ボウエンギョ属の一種(Benthalbella chunii) |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes ヒメ目 Aulopiformes ボウエンギョ科 Giganturidae ボウエンギョ属 Benthalbella ボウエンギョ属の一種 Benthalbella chunii Benthalbella indica |
| 体長 15-20 cm |
| 分布域 世界中の熱帯〜亜熱帯海域 |
| 生息水深 深海域,底層遊泳性 |
| ボウエンギョ科はデメエソ科と同様にヒメ目に属する深海魚です.わずか2種しか知られていませんが,両種ともに世界中の熱帯域に分布します. その名の通り,眼は双眼鏡のような格好をしており真正面を向いています. 変わった眼をもつにもかかわらず,仔魚のときはふつうの眼をしています.仔魚が親とあまりに異なる形をもつために,発見された当初は「ロザウラ科」という新しい分類群が設立されました.後の研究により,仔魚と成魚をつなぐ中間型が発見され,ロザウラがボウエンギョ科の仔魚であることがわかりました. 日本周辺海域からの採集記録はまだないので,正式な和名はありません. |
| このページの先頭に戻る |
| ヘビのような体と光るヒゲ ワニトカゲギス のなかま |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() ムラサキホシエソ |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes ワニトカゲギス目 Stomiiformes ホウライエソ科 Chauliodontidae ホウライエソ属 Chauliodus ホウライエソ Chauliodus sloani ホテイエソ科 Melanostomiidae ムラサキホシエソ属 Echiostoma ムラサキホシエソ Echiostoma barbatum ホウキボシエソ科 Malacosteidae オオクチホシエソ属 Malacosteus オオクチホシエソ Malacosteus niger |
| 体長 2-50 cm |
| 分布域 世界の亜寒帯〜熱帯海域 |
| 生息水深 中深層海底 |
| ワニトカゲギス目のワニトカゲギス科,ホウライエソ科,トカゲハダカ科,ホテイエソ科,ホウキボシエソ科,ミツマタヤリウオ科はヘビのような細長い体の先に鋭い歯が並ぶ大きな口をもち,顎の下に発光器を備えたヒゲをもつことが特徴となっています. 写真のムラサキホシエソは眼の後ろにルビー色に光る発光器をもちます.また,ヒゲの先端もルビー色に光ります.ヒゲの方はエサをおびきよせるためのものだと言われています. |
| このページの先頭に戻る |
| 甲冑(カブト)をかぶった魚 カブトウオ のなかま |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() カブトウオのなかま4種 |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes カンムリキンメダイ目 Stephanoberyciformes カブトウオ科 Melamphaidae ホンカブトウオ属 Melamphaes トゲカブトウオ Melamphaes suborbitalis カブトウオ属 Poromitra チヒロカブトウオ Poromitra oscitans オオメカブトウオ Poromitra megalops ヨロイギンメ属 Scopelogadus ヨロイギンメ Scopelogadus mizolepis |
| 体長 トゲカブトウオ チヒロカブトウオ オオメカブトウオ ヨロイギンメ いずれも5-10 cm程度 |
| 分布域 トゲカブトウオ 北大西洋,南西太平洋 チヒロカブトウオ インド洋と太平洋の熱帯・亜熱帯海域 オオメカブトウオ インド洋,太平洋,大西洋 ヨロイギンメ インド洋,大西洋,西太平洋,東太平洋 |
| 生息水深 トゲカブトウオ 500-1500 m チヒロカブトウオ オオメカブトウオ ヨロイギンメ いずれも200 m以深の中・深層域 |
| カブトウオのなかま(カブトウオ科)は,オニキンメと同様にキンメダイに近縁なグループです.その独特の顔つきから甲冑(カブト)をかぶったような魚,カブトウオという和名がついたようです. 顔面に走る線は「側線」といって,中には神経が縦横に走っています. 世界の中・深層から5属36種が知られています. |
| このページの先頭に戻る |
| ご存知! 生きている化石 シーラカンス |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() 展示中のシーラカンス |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes シーラカンス目 Coelacanthiformes ラティメリア科 Latimeridae ラティメリア属 Latimeria シーラカンス Latimeria chalumnae |
| 体長 2 mに達する |
| 分布域 インド洋・コモロ諸島周辺海域(別種がインドネシア・スラウェシ島周辺海域に生息) |
| 生息水深 150-700 m |
| シーラカンスも深海魚 化石ではごくふつうに見られるシーラカンスが,1938年に南アフリカのコモロ諸島沖で発見されたときは,世界中で大騒ぎになりました.コモロ諸島沖には,火山活動で出来た海底洞窟がたくさんあり,どうやらそこに隠れることにより絶滅を逃れたようです.その後の潜水艇をつかった調査により,水深120〜400mにある海底洞窟にシーラカンスがすんでいることが明らかになりました.昼は海底洞窟の中で休み,夜になるとその外に出て,餌となる小さな魚を探し回っているようです. 第二のシーラカンス 最初の発見から約60年後,なんとコモロ諸島から10,000km以上も離れたインドネシアのメナド沖で第二のシーラカンスが発見されました.形があまりにも似ているため,当初はアフリカ沖から迷いこんで来たのではないかと言われていました.ところが,当館の職員を含む研究チームがDNAを調べたところ,コモロとインドネシアのシーラカンスが3500万年も前に分かれたことが明らかになり,両者が別種であることが確かめられました (Inoue et al. 2005). なぜ二種に分かれたのか? その昔5000万年前に,今のインドは「インド亜大陸」としてインド洋を北上しユーラシア陸大に衝突しました.どうやらこの衝突が,当時インド洋に広く分布していたシーラカンスの生息域を分断してしまいました.東西で交流できなくなった二つの集団が,数千万年の歳月をかけて別種になったと考えられています. |
| このページの先頭に戻る |