| 千葉県立中央博物館平成18年度企画展 驚異の深海生物 −未知の深世界をさぐる− |
| 目玉展示の数々から |
| どっちが世界最深記録をもつ魚? ヨミノアシロ vs シンカイクサウオ |
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![]() ヨミノアシロ |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes アシロ目 Ophidiiformes アシロ科 Ophidiidae ヨミノアシロ属 Abyssobrotula ヨミノアシロ Abyssobrotula galatheae カサゴ目 Scorpaeniformes クサウオ科 Liparidae Pseudoliparis 属(和名なし) シンカイクサウオ Pseudoliparis amblystomopsis |
| 体長 ヨミノアシロ 約15 cm シンカイクサウオ 約20 cm |
| 分布域 ヨミノアシロ 熱帯〜亜熱帯海域の全海洋 |
| 生息水深 ヨミノアシロ 3110-8370 m シンカイクサウオ 6000 m以深 |
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ヨミノアシロとシンカイクサウオは,水深 6000 メートルを超える海溝にすむ数少ない魚です. ヨミノアシロはアシロ目という約 400 種を含む分類群に属します.アシロ目は深海に適応した種を多数含んでおり,いまだに新種が多数発見されます. 一方,シンカイクサウオはカサゴ目のクサウオ科という分類群に属します.日本周辺海域からの学術的な報告がないため,未だに日本の魚類図鑑にも載っていません. |
| 自分よりも大きい餌を呑み込んだ オニボウズギス |
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![]() オニボウズギス |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes スズキ目 Perciformes クロボウズギス科 Chiasmodontidae オニボウズギス属 Chiasmodon オニボウズギス Chiasmodon niger |
| 体長 約15 cm |
| 生息水深 200-1000 m |
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クロボウズギスのなかまは外洋の中・深層 (水深200〜1000m) に生息します.いずれも鋭い歯をもち,口が大きく,自分より大きなエサを丸呑みすることで有名です. 上の写真のオニボウズギスは,インドネシアのフローレス海で採集された標本です.通常は白線で示されるようなスリムなボディーをもっていますが,エサを丸呑みすると胃が拡張してこのような姿になります. このようにエサを丸呑みしたままの標本は珍しいため,胃内容物を取り出していませんが,おそらくイカのなかまを呑み込んだものと思われます. |
| 腹まで裂けた巨大な口をもつ フクロウナギ |
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![]() フウセンウナギ属の一種 |
![]() フクロウナギ |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes フウセンウナギ目 Saccopharyngiformes フウセンウナギ科 Saccopharyngidae フウセンウナギ属 Saccopharynx フウセンウナギ属の一種 Saccopharynx sp. フクロウナギ科 Eurypharyngidae フクロウナギ属 Eurypharynx フクロウナギ Eurypharynx pelecanoides |
| 体長 フクロウナギ 100 cmに達する |
| 分布域 フクロウナギ 東太平洋(カリフォルニア北部からペルー) |
| 生息水深 フクロウナギ 500-7500 m |
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深度 1000 m より深い中・深層に生息するもっとも風変わりな深海魚の一つです. 最近の DNA を用いた分子系統学的研究 (Inoue et al. 2003) により,ウナギ目の内部から進化してきたグループであることがわかりました. フウセンウナギもフクロウナギも,喉を通り越して腹まで裂けた口が特徴的です.目の前にきた獲物がどんな大きさでも,とりあえず呑み込んでしまえという戦略だと考えられます. |
| 上を向いて暮らす魚 テンガンムネエソ |
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![]() ナガムネエソ |
![]() トガリムネエソ |
| 分類 脊索動物門 Chordata 硬骨魚綱 Osteichthyes ワニトカゲギス目 Stomiiformes ムネエソ科 Sternoptychidae テンガンムネエソ属 Argyropelecus ナガムネエソ Argyropelecus aculeatus トガリムネエソ Argyropelecus affinis |
| 体長 ナガムネエソ 約5 cm トガリムネエソ 約5 cm |
| 分布域 ナガムネエソ 熱帯〜温帯水域 トガリムネエソ 熱帯〜温帯水域 |
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テンガンムネエソ属 (Argyropelecus) を上から見ると,口も眼も上を向いていることがよくわかります.上を泳ぐ小さな動物プランクトンを見つけ,下からパクッと呑み込むのでしょうか. また,彼らを下から見ると,発光器が腹側にずらっと並んでいることがわかります.みずから光ることにより,われわれが逆光でなにも見えなくなるのと同じ状態をつくりだし,捕食者の目から逃れていると言われています. |
| 世界一深い海にすむ カイコウオオソコエビ |
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![]() 図1.カイコウオオソコエビ全形 マリアナ海溝チャレンジャー海淵水深10900 mより採集 海洋研究開発機構所蔵標本 解説文に |
![]() 図2.カイコウオオソコエビの頭部側面 目は完全に退化している 触角は短いが,えさのにおいを敏感にキャッチ! 解説文に |
| 分類 節足動物門 Arthropoda 甲殻綱 Crustacea 端脚目 Amphipoda フトヒゲソコエビ科 Lysiannasidae Hirondellea 属(和名なし) カイコウオオソコエビ Hirondellea gigas (Birshtein & Vinogradov, 1955) |
| 体長 4.5 cmに達する |
| 分布域 北西太平洋の海溝部:千島・カムチャッカ海溝,日本海溝,伊豆・小笠原海溝,マリアナ海溝,フィリピン海溝,ヤップ海溝,パラオ海溝 |
| 生息水深 6000-10900 mの泥底 |
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海は深い 世界の海の深さを平均すると3500〜3800 mと言われています.海のほとんどは深海といっていいでしょう. その中でももっとも深い部分は,海溝と呼ばれる溝のようになった部分です.大陸プレートと海洋プレートの境目にあたる部分です.その深さは10000 mを超えることもあります. 有名な海溝としては,日本の太平洋側沖合を南北にのびる日本海溝,北太平洋北部のアリューシャン海溝,世界最深部をもつマリアナ海溝などがあります. マリアナ海溝のもっとも深い部分(チャレンジャー海淵と呼ばれる)は水深10900 mに達します. 海溝の調査は難しい 海溝内部は非常に深いため,科学的な調査を行うのは技術的に困難を極めますし,経済的にも莫大なコストがかかります. 例えば,水深10000 mでトロール調査をしたいということになると,網をひくためのワイヤーは15 km以上くり出さなければならないでしょう.トロール1回あたり丸1日費やします. そのようなことのできる研究調査船は世界でも数えるほどしかありません.先駆的な調査としてはデンマークのガラテア号,旧ソ連のヴィチャージ号によるトロール調査があり,海溝底の大型底生動物に関する私たちの知識はこれらに多くを負っています. 最近では日本の研究船白鳳丸(現海洋研究開発機構)が日本海溝や琉球海溝などでトロール調査を行ってきました. 超深海にどんな生物がいるか 一方,現存の有人潜水艇で水深6500 mより深い海溝底に達することのできるものはありません.そのような人間の手の届きがたい超深海にどのような生物が生息しているのかは非常に興味を引くものです. これまで,海溝内部に生息することが知られる動物としては,甲殻類のミズムシ類やタナイス類,棘皮動物のナマコ類,魚類がありました. 例えば,標本によって確認しうる魚類の最新記録は,西大西洋プエルト・リコ海溝で採集されたヨミノアシロAbyssobrotula galatheae Nielsen, 1977の水深8374 mです. カイコウオオソコエビの発見 海洋開発研究機構は1998年にマリアナ海溝のチャレンジャー海淵で生物の採集調査を行いました. えさ付きのわなを水深10900 mの海底に仕掛けたところ,ヨコエビの1種が採集されました.それが カイコウオオソコエビ (図1) です. 最深記録保持者,カイコウオオソコエビ カイコウオオソコエビHirondellea gigas (Birshtein & Vinogradov, 1955)はフトヒゲソコエビ科Lysiannasidaeのヨコエビです.Hirondellea属には世界で7種が知られますが,その多くが深海性です. この時の調査で採取された大型底生生物はこのヨコエビだけでした.これまでに知られている動物としては世界でもっとも深い海に生息するものといって良いでしょう. エビと言ってもエビではない エビという名前が付いていますが,十脚目のエビ類とは異なり,フクロエビ上目端脚目に分類されます. カイコウオオソコエビはヨコエビとしては大型になり,体長約4.5 cmに達します. 色は淡い茶色をしていますが,体内には黄色をしたオイルのような物質が貯えられています.このオイルのような物質は体内に貯えられた栄養分かもしれませんが,標本にすると溶け出してしまいます.そのため,標本はスカスカになってしまいます. 眼は完全に退化 眼は完全に退化し,認められません (図2) . 種分化の途中? 本種は,北太平洋の千島・カムチャッカ海溝で初めて発見され,その後フィリピン海溝,日本海溝,伊豆・小笠原海溝,ヤップ海溝,パラオ海溝など北西太平洋の各地から見つかっています. 離れた海溝から採集された標本を比較した結果,わずかな形態の違いが認められるという報告もありますので,種レベルでの分化が起きているのかもしれません. 謎の生態 生態などはほとんど分かっていません. 海洋研究開発機構の調査では腐肉をえさとしたわなで採集されましたが,10000 mを超えるような海底にふだん十分な食べ物があるのでしょうか.いつもは何を食べているのでしょうか.謎に満ちています. |
| 熱水を見切る! フクレツノナシオハラエビ |
| 画像および解説文の無断転用はご遠慮下さい |
![]() ![]() 図1.フクレツノナシオハラエビの標本写真.大西洋中央海嶺産 上,背面;下,腹面.千葉県立中央博物館所蔵 解説文に |
![]() 図2.フクレツノナシオハラエビの正面 眼柄は左右が融合してゴーグルのようなプレート状に変形している 解説文に |
![]() 図3.生きているフクレツノナシオハラエビの頭胸部 透けて見える薄いピンク色の内臓が背器官(眼の変形したもの) フランス国立海洋研究所Ifremer提供 解説文に |
| 分類 節足動物門 Arthropoda 甲殻綱 Crustacea 十脚目 Decapoda オハラエビ科 Alvinocarididae ツノナシオハラエビ属 Rimicaris フクレツノナシオハラエビ(改称) Rimicaris exoculata Willimas Rona, 1986 |
| 体長 約60 mm |
| 分布域 大西洋中央海嶺の北半球側(北緯36度13分-12度57分).熱水噴出域に固有 |
| 生息水深 1750-3650 m |
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最も特殊化の進んだエビ,ツノナシオハラエビ ツノナシオハラエビ属Rimicaris Williams Rona, 1986はオハラエビ科Alvinocarididaeに属し,十脚目コエビ下目の中でも最も特殊化の進んだエビの一つです. 現在のところ,フクレツノナシオハラエビ Rimicaris exoculata Williams Rona, 1986とカイレイツノナシオハラエビ Rimicaris kairei Watabe & Hashimoto, 2001の2種だけが知られています. 熱水噴出域に固有 両種とも深海の熱水噴出域に固有で,前者は大西洋中央海嶺,後者はインド洋中央海嶺に分布しています. 熱水噴出孔付近に何千何万ものエビが群れる様子が潜水艇の調査により観察されており,大西洋やインド洋の熱水噴出域の生物相を特徴付ける生物の一つです. 実に変わった形態 形態は実に変わっています(図1) . 頭胸甲は丸くふくれ,体の両側にある鰓を収容する空間(鰓室)が大きくなっています. 体表には短い毛の束(実際は小さなくぼみの周囲に環状に毛が配列)が散在します. 眼柄は大きく変形し,左右が融合してゴーグルのようなプレート状になってしまいます(図2) . 普通のエビが持っているような複眼はありません.そのため,ジェット機や新幹線の前方のような形となっています. 一部の口器の表面にはバクテリアのコロニーを伴った毛が密生します.体長60 mmほどに達します. 背器官の存在 注目すべきは,体の内部にある,眼の部分から後方に向かってのびる一対の白っぽい内臓です(図3) .このような内臓はほかのエビには見られないもので,dorsal organ(背器官)と名付けられ,発見された当初から研究者の注目を集めていました. 昔は目だった背器官 詳しい研究がなされた結果,驚くべきことが分かりました.光受容物質であるロドプシンが含まれていることが判明し(人間の目だと網膜の視細胞に存在します),この内臓は目が変形したものであったことが分かったのです(Van Dover et al. 1989). ロドプシンを含む細胞はこの背器官の表面に存在します. ただし,目といっても,象をとらえることができるものではなく,光探知機ではないかと考えられています. 熱水を見切る? フクレツノナシオハラエビは水深1750〜3650 mという太陽光の全く届かない場所に生息しています.体内に内蔵された目で何を見ているのでしょうか? 仮説がいくつかありますが,そのうちの一つに,熱水から放射される微弱な光を感知することにより暗闇の中でも熱水の位置を決めることができるのではないかというものがあります(Van Dover et al. 1989). これらのエビは熱水を“見” ているのかもしれません. エビの失明 最近の研究により,訪れた潜水艇のライトのために,エビの目が失明してしまうことが分かりました.一度失明してしまうと,回復しないようです. 人間の探究心にエビたちは迷惑しているかもしれません. |