千葉県イノシシ・キョン管理対策基本方針

(平成12年1月28日 千葉県環境部長)

→千葉県の哺乳類へ

 イノシシ・キョンによる生態系への影響と農林作物被害に対処することを目的に設置された「千葉県イノシシ・キョン管理対策協議会」での協議結果に基づき、今後のイノシシ・キョンに係る管理対策については、以下の方針により対応することとする。

1 移入種の定義
 移入種とは、その地域の自然における本来の構成員ではなく、人為的に持ち込まれた種である。

2 移入種についての基本的な考え方
 移入種はその地域の自然における本来の構成員ではなく、交雑、競合、捕食、採食などによって在来の生態系を乱す存在である。
 そのため、今後、新たな移入を生じさせないこととし、又、移入された場合には、自然生態系への影響を重視し、農林作物被害等の人間生活への影響の多少にかかわらず、基本的にはその地域から排除することを目標とする。

3 千葉県におけるイノシシ・キョンの生息由来
 イノシシは千葉県在来の種であるが、県内では1973年〜1985年の間は捕獲されておらず、その間の確実な生息情報も得られていないことから、千葉県のイノシシは絶滅した可能性が高いと考えられている。
 現在生息しているイノシシは、狩猟目的のためイノシシ・イノブタを1980年以降に複数回放獣したとする情報も得られていることから、これらの放獣個体が繁殖した可能性が極めて高い。
 ただし、一度絶滅したという確証は得られていないことから、現在生息するものの中に在来個体群の遺伝子が一部残存している可能性は、現時点において否定できない。
 キョンは日本の在来種ではなく、明らかに移入種である。
 千葉県におけるキョンの移入源は、キョンの飼育履歴と飼育状況、周辺の生息状況、関係者からの情報などから動物展示等施設からの脱柵であると考えられている。

4 千葉県におけるイノシシ・キョンの管理の基本的な考え方
 現在生息するイノシシ(イノブタを含む、以下同じ。)は移入個体群である可能性が高いが、在来個体群の遺伝子の一部を残している可能性もまた考えられる。
 そのため、当面、イノシシは完全に排除することを目標とはせず、近年増加している農林作物被害を効果的に軽減させていくことを目標とする。
 キョンは明らかに移入種であり、千葉県の自然から排除することを目標とする。
 さらに、イノシシ・キョンの新たな移入を生じさせないことを目標とする。

5 イノシシ・キョンの管理の方策
 基本的には、すでに千葉県で実施しているシカ、サルの保護管理と同様に管理目標の設定、施策の実施、モニタリング調査による施策の評価、それに基づく目標や施策の見直しが一連の流れとなって機能するシステムに基づいた管理を推進する。

 1)個体数管理
 生息状況と被害状況を把握しつつ、計画的に、安全に、効率よく個体数の管理を実施する。
 イノシシについては農林作物被害の軽滅に効果的に結びつくように、キョンについては個体群の衰退に効果的に結びつくように個体数の管理を実施する。
 なお、有害鳥獣駆除は、毎年度「駆除方針」を策定し、これに基づいて実施する。

ア.狩猟
 狩猟獣であるイノシシは、安全性に配慮しながら狩猟による捕獲を行う。
 キョンは狩猟獣ではないため、狩猟による捕獲は行わない。

イ.有害鳥獣駆除
 イノシシ・キョンについて、安全性に配慮しながら、生息状況と被害状況に基づき、地元市町村による有害鳥獣駆除を適切に実施する。

ウ.調査及び生息数調整のための捕獲
 イノシシ・キョンについて、安全性に配慮しながら、生息状況と被害状況に基づき、県による調査を兼ねた捕獲を、実施体制を整えたうえで計画的に実施する。

 2)防護柵の設置
 被害軽減のため、シカ、サルに対する防護柵設置事業を活用し、シカ、サルだけでなくイノシシにも有効な防護柵の設置を推進する。

 3)生息地の確保
 イノシシについては、一度絶滅したという確証は得られていないことから、当面は鳥獣保護区を中心として、生息地を確保する。なお、被害状況に応じて鳥獣保護区域内においても捕獲を実施する。

3 モニタリング調査
 継続的にモニタリング調査を実施し、適切な管理施策の実行と管理施策の評価のための科学的根拠の収集、蓄積を図る。

 1)生息状況調査
 分布、地域毎の生息密度、被害状況等の調査を実施する。

 2)捕獲個体の解析
 5の1)のウにより捕獲した個体並びに必要に応じて5の1)ア、イにより捕獲した個体についても分析用のサンプル回収を行い、食性、年齢、栄養状態、繁殖状態等についての調査を実施する。

 3)捕獲情報の収集
 捕獲情報(日付け、地点、性別、体重、体サイズ、必要に応じて個体解析用のサンプル回収、写真撮影等)の収集、蓄積を実施する。

7 移入の防止
 1)関係機関への指導
 狩猟目的等のイノシシの放獣をなくすため、猟友会関係者等への周知徹底を図る。 キョンについては、移入源と考えられている動物展示等施設における飼育環境の改善を早急に指導する。
 また、他の飼育動物についても、適正な飼育が行われるよう動物園等の飼育業者に対する指導を行う。

 2)関係機関との協議
 移入の防止策について、今後も必要に応じ、県、市町村、調査研究機関、猟友会、農業者団体などの関係機関において協議を行う。

 3)普及啓発
 千葉県では、狩猟目的の放獣や飼育環境不備による脱柵に加え、ペットとして飼いきれなくなったアライグマ等の野外での生息数も増加している。
 ペットや他から持ってきた動物を野外に放すことは、長い歴史をもつその地域固有の自然の破壊につながるということを、行政各組織及び県民への普及啓発を積極約に実施する。

→千葉県の哺乳類へ