No.414 2006/09/23(土)

 ブタクサハムシ


dummy    清和県民の森・木のふるさと館の駐車場で1株だけブタクサをみつけた。この草は北米原産で明治の頃に侵入した帰化植物。市街地周辺では道ばたや空き地にごく普通に生育する“雑草”である。しかし、森林が広がる山奥ではあまり目にすることがない。
   「ブタクサなんて珍しいな」と思って撮影した。その最中、あることが気になって葉や茎を細かく点検したら、案の定、みつけてしまった。ブタクサハムシである。この昆虫は、その名の通りおもにブタクサを食べる甲虫で、ブタクサと同じ北米原産。体長5ミリ弱の小さな虫で、知らなければ見過ごしてしまう。
   ブタクサハムシには因縁がある。日本で最初にこの昆虫が記録されたのが、中央博物館の生態園だったのだ(文献参照)。1996年のことである。その後、関東、関西の市街地を中心に郊外へ向かって急速に分布を広げた。この虫の侵入後、各地でブタクサが減ったともいわれる。
   そのブタクサハムシがここまで来ているということに驚いた。昨年の9月24日にはここから北に約4キロ離れた三島神社付近で発見したが、こんな山奥でみつけたのは初めてである。しかも、付近にはこの1株を除いてブタクサは見当たらない。それを目ざとくみつけてどこかから飛んできたのだろう。小さな昆虫の分散能力について考えさせられてしまった。
(尾崎煙雄)
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 ブタクサ Ambrosia elatior(キク科)

 ブタクサハムシ Ophraella communa(ハムシ科)

<文献> 滝沢春雄・斉藤明子・佐藤光一・平野幸彦・大野正男(1999)侵入昆虫ブタクサハムシ ー関東地方での分布拡大と生活史ー.月刊むし(343): 44.

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