No.741 2009/08/08(土)

 マントル昆布


dummy  この時期、北海道では昆布漁が盛んで、丸い石ころの上に昆布が天日干しされているのを海沿いの町でよく見かける(写真1)。
 日高山脈南端・襟裳岬の西岸のえりも町や様似町へ出かけると、ちょっとかわった光景を目にする。昆布を干している石ころが黄緑色なのだ(写真2、3)。
 この石の正体は「カンラン岩」という地球深部のマントルを構成する岩石だ。様似町のアポイ岳周辺は、地球表層のプレート同士の衝突で日高山脈が隆起するときに、マントルの一部が地表に露出した地域なのだ。マントルを構成するカンラン岩は主にカンラン石という鉱物からできており、この鉱物が黄緑色しているため、石自体もこの色なのだ。
 昆布を干している方に話を伺うと、このアポイ岳の麓の採石場から取った砂利を天日干し用に敷いていると教えてくれた。しかもこの石のことを「オリビン」と呼んでいるとのことだ。オリビンはカンラン石の英語名で、オリーブ色しているところから名付けられた。「オリビン」は砕いただけなので、角張っているから風通しがいいので乾きやすいそうだ。
 ところが、えりも町の目黒で取れる丸みのある砂利は「目黒石」、その他の川原で取れる玉砂利は「川石」と呼び、両者とも丸みを帯びているから、昆布を干しているとくっついてしまい手間がかかるので毛嫌いされているとも伺った。
 ただし、北海道の昆布干しに使われる一般的な石は丸みを帯びているので、「オリビン」を使うのはこの地域の特徴だ。
 昆布を見ながら石談義に花が咲いた。昆布漁をされる方は岩石も分かるようだ。それにしてもマントルの石で昆布干しとは…。「マントル昆布」として商品化すると、石好きにはたまらない一品になるに違いない。
 (大木淳一)
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dummy 写真1
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dummy 写真2
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dummy 写真3
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 カンラン岩 Peridotite

 カンラン石 Olivine

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