館山市在住のＦさんが珍しい昆虫を届けてくださった（写真１）。体長３ミリほどの小さなハエ（写真２）。コウモリの体表に寄生して吸血するコウモリバエの１種だ。冬眠中のキクガシラコウモリの身体から採集したのだそうだ。
　つい最近、カリブ海の島国、ドミニカ共和国で採集された琥珀の中から２０００万年前のコウモリバエ科の仲間の化石が発見されたというニュースを読んだ。その化石も見た目はこのコウモリバエとそっくりだった。そんな昔からコウモリに寄生する生き方を確立していたと思われる。
　現生のコウモリバエだって滅多にお目にかかれない。なにしろ生きたコウモリの身体にしかいないのだから。貴重な標本なので、丁寧に展翅した（写真３）。
　（尾崎煙雄）

　コウモリバエの１種　Brachytarsina sp.（コウモリバエ科）

　キクガシラコウモリ　Rhinolophus ferrumequinum（キクガシラコウモリ科）