No.1041 2012/07/06(金)

 トビエイの歯


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 写真の化石は、千葉市在住の市民研究員の方が、「何の化石でしょうか」、と博物館に持ち込まれたものである。これは相当化石が好きな人でないと見当がつかないかも知れない。トビエイ類の歯の化石である。エイはサメと同じ軟骨魚類の板鰓類に属する。軟骨魚類と言うだけあって、体の骨の大部分が軟骨でできているので、死後、骨格は軟体部と同じように崩れてしまい、化石として残ることは稀だ。逆に、歯はエナメル質で被われていたり、象牙質でできていたりして丈夫なうえ、奥からどんどん新しい歯が押し出されてきて生え替わるため、化石としては残りやすい。トビエイの歯も化石としてしばしば見つかる。だだ、今回の化石は歯が何本も並んだ、いわばアゴそのものの化石で、このような化石はかなり珍しい。トビエイはこのような歯が石畳のように並んでいて、カニや貝をかみ砕いて食べるのである。
 銚子市のYさんより寄贈していただいた、現生のトビエイのアゴの標本がたいへん役立った。大きさは異なるが、中央の細長い歯が、直線的であまり咬耗していないことから、この化石は下あごの奥の歯と見られる。
 (加藤久佳)

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写真1 トビエイの歯化石(咬合面)
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写真2 同(歯根面)
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写真3 現生トビエイ(Myliobatis tobijei)のアゴ(側面から)
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写真4 同 下顎を奥側から見たところ
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 トビエイの仲間 Myliobatis sp.(トビエイ科)

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