No.1112 2013/02/22(金)

 ハリガネムシ


dummy

 東京大学千葉演習林にお勤めのNさんからハリガネムシをいただいたので、撮影した。Nさんが伸ばして測ってみたら、全長50センチを超えていたそうだ。ここまで長いのは珍しい。
 ハリガネムシはカマキリなどに寄生する寄生動物だ。『千葉県の自然誌本編6千葉県の動物1陸と淡水の動物』の記述によると、千葉県内で見つかるハリガネムシ類はおもに2種で、表面がざらつくタイプと、表面がすべすべのタイプがある。前者はおもにカマキリに寄生し、かつては水田やため池などによく見られたが近年少なくなっている。後者はおもにカマドウマなどに寄生し、房総丘陵の渓流に多い。いただいたハリガネムシはすべすべタイプなので、カマドウマに寄生する Gordius japonicus という種のようだ。
 ハリガネムシの寿命は約1年で、この間に2種類の宿主に寄生する。4〜6月頃産まれた卵から孵化した幼虫はすぐにカワゲラやトンボなどの幼虫の体内に寄生する。これら宿主の水棲昆虫がハリガネムシの幼虫を宿したまま羽化して成虫になり上陸する。水棲昆虫の成虫がうまい具合にカマキリやカマドウマに食べられると、ハリガネムシはこの捕食者に乗り換えて寄生する。カマキリやカマドウマの体内で成長したハリガネムシは夏の終わりから秋にかけての時期に宿主から脱出して水中に入り越冬する。越冬中のハリガネムシは何も食べない。4〜6月に交尾産卵を終えたハリガネムシは一生を終える。
 不気味といわれることの多いハリガネムシだが、人には無害。触ってみると少し硬く、たしかに針金に似た感触だ。水槽の中でゆらゆらと動く姿は見ていて飽きない。
 (尾崎煙雄)

dummy
dummy
dummy
dummy

 ハリガネムシの1種 Gordius japonicus(ゴルディウス科)

dummy


ニュース一覧へもどる