No.1348 2015/04/19(日)

 タニギキョウ


dummy

 山道沿いの湿った斜面に群生した純白の花(写真1)。タニギキョウの花だ。直径1センチ弱の小さな花で、草丈は5センチほど(写真2)。キキョウの仲間としてはとても小さな植物で、見過ごされやすい。だが、その清楚な美しさは春の山を彩る草花の中でも際立っている。
 この植物には面白い特徴がある。多くの草木が繁茂する夏に、タニギキョウは姿を消してしまうのである。花が咲き終わり5月になるとタニギキョウの茎や葉は枯れてしまい、6月から9月にかけては影も形も見当たらない。10月頃に新たな茎と葉が伸びて、そのまま冬を越し、4月に開花する。このような性質を「冬緑性(とうりょくせい)」という。他の草に覆い隠されてしまう夏を避け、競争相手の少ない冬に光合成を行うという生き方を選んだのだ。まるで「我が道を行く」とでもいうようなこの性質もタニギキョウの魅力である。
 (尾崎煙雄)

dummy
dummy
写真1
dummy
dummy
写真2
dummy
dummy

 タニギキョウ Peracarpa carnosa(キキョウ科)

dummy


ニュース一覧へもどる