雑木林の散策中、視界の端に赤い点を認めた(写真1)。色彩のないコナラの樹皮上の鮮やかな赤は、たとえ小さくても目立つ。
近づいて拡大してみてわかった赤い点の正体は、クモの身体に寄生した真っ赤なダニであった(写真2)。コケヒメグモという体長4ミリほどの小型のクモに、体重で比較すれば寄主のクモの2〜3割はありそうなダニが2匹も取り付いている。おそらくタカラダニ科の仲間の幼虫であろう。
気の毒なクモに同情しつつ視線を上げると、同じようにダニを背負った別のコケヒメグモが目に入った(写真3)。こちらは4匹のダニに寄生されている。その近くに、なんと10匹以上のダニに寄生されたコケヒメグモ(写真4)。さらにもう1匹も見つかった(写真5)。わずか50センチほどの範囲に同じようにダニに寄生されたコケヒメグモが4匹も見つかったのだ。この木の幹のどこかにダニの卵が産み付けられていたのだろうか。クモにとっては危険地帯だ。
捕獲して観察してみたところ、多数のダニに寄生されながらもクモは意外と元気で、素早く走り回った(写真6)。寄生生物であるダニの立場からすれば、寄主が死んでしまったら自分も生きていけないはずだから、死なない程度に搾取しているのだろう。
(尾崎煙雄) |