No.1473 2016/10/21(金)

 アカボシゴマダラの幼虫


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 木更津市内の丘陵地にて。切り株から再生したエノキの萌芽(写真1)。エノキを食草とする昆虫は多い。何かいないかと葉を一枚一枚点検したところ、小さなイモムシを見つけた(写真2)。チョウの幼虫には違いないが、体長1センチ以下と小さな幼虫なので、種類を判定しかねていたが、別の葉上でもっと大きな幼虫を発見した(写真3)。
 いやな予感が的中した。これはアカボシゴマダラというチョウの幼虫に違いない。アカボシゴマダラは国内では奄美大島にのみ生息する珍しいチョウなのだが、近年、関東を中心に分布を拡げている。これは人為的な放蝶が原因と考えられている。アカボシゴマダラの分布拡大は、もともと関東に生息していて同じエノキを食草とするゴマダラチョウやオオムラサキとの競合が懸念されている。しかも関東で放蝶されたのは奄美大島に分布する「奄美亜種」(写真4)とは異なり、中国や朝鮮半島に分布する「原名亜種」(写真5)で、翅の模様にも違いがある。
 放蝶起源のアカボシゴマダラは千葉県内でも着々と分布を拡げつつあるが、房総丘陵の一角であるこの木更津市内にも定着しているということだ。残念な発見であったが、悪いのはこの昆虫を意図的に放した人間であって、イモムシに罪はない。一対の立派な角を持ち、愛嬌のある顔をしたアカボシゴマダラの幼虫(写真6)を見ながら複雑な気持ちになった。
 (尾崎煙雄)

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写真1
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写真2
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写真3
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写真4
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写真5
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写真5
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 エノキ Celtis sinensis(ニレ科【E】、アサ科【A】)

 アカボシゴマダラ原名亜種 Hestina assimilis assimilis(タテハチョウ科)

 アカボシゴマダラ奄美亜種 Hestina assimilis shirakii(タテハチョウ科)

 ゴマダラチョウ Hestina japonica(タテハチョウ科)

 オオムラサキ Sasakia charonda charonda(タテハチョウ科)

 ※被子植物の分類体系:【E】新エングラー、【A】APGIII

 


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