No.1479 2016/11/18(金)

 モミジバフウ


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 「校庭にある木の名前を教えてください」と、三島小の6年生の女の子が訪ねてきた。
 「いいよ。どの木?」
 「えーっと、校門の近くにある大きい木。」
 「うーん、どの木のことかな。見に行こうか。」
 「はい。」
 二人で校庭を横切り校門に向かう途中、「あの木です」と彼女が指さしたのは、見事に紅葉した大木であった(写真1)。
 「ああ、この木か。これはね、モミジバフウという木だよ。」
 「もみじ、ば、ふ、う?」
 「そうそう『フウ』という木の仲間で葉っぱがモミジに似ているから、モミジバフウっていうんだ。」
 「『もみじばふう』ですね。ありがとうございます。」
 「ところで、なぜこの木の名前を知りたいの?」
 「あの、学校を紹介するパンフレットを作っているんです。卒業の記念なんです。」
 「なるほど、それはいいね。この木は三島小のシンボルなんだね。」
 「はい。どうもありがとうございました。」そう言って彼女は教室へ戻って行った。

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写真1
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 なるほど、毎日通った校門の脇にある大木。秋には紅葉を楽しみ、夏には木陰で遊んだ思い出もあるだろう。かくいうぼくにもこの木については思い出すことがある。
 10年以上前のこと、4年生のA子ちゃんが総合学習でこの木について調べていた。ある日、A子ちゃんがぼくに1枚の落ち葉を見せて、「これ、おかしい」と訴えたのだ。見ると、3つに分かれたフウの葉であった。
 「それはフウの葉っぱでしょ?」
 「ちがーう。これはモミジバフウなの。」
 「モミジバフウの葉っぱは5つに分かれるんだよ。3つに分かれるのはフウっていう別の種類...」
 「でもこれはモミジバフウなの。だからおかしいの。」
 フウの仲間には、中国原産のフウと北米原産のモミジバフウという2種がある。紅葉が美しいので、日本でも各地で植栽されている。この2種は葉の形で見分けることができる。3裂するのがフウ、5裂するのがモミジバフウ、と図鑑にも書かれている。
 三島小にあるのはモミジバフウだ。ところがその落ち葉をよく見ると5裂の葉に混じって3裂のものがあり、そのことに気づいたA子ちゃんがぼくに訴えたのであった。彼女の観察は正しく、モミジバフウの葉は基本的には5裂するが中には3裂のものもあるのだった(写真2)。
 図鑑に載っていることがすべて正しいとは限らない。自分の観察と図鑑の食い違いに気づいたとき、自分を疑わず、図鑑の方を疑ったA子ちゃんはたいしたものだったなぁ、と改めて思い出す。
 (尾崎煙雄)

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写真2
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 モミジバフウ Liquidambar styraciflua(マンサク科)

 フウ Liquidambar formosana(マンサク科)

 


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