No.1503 2017/03/10(金)

 ヤドリギ自慢


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 以前、君津市清和公民館の講座で房総丘陵の自然についてお話をさせていただいたことがある。その時の私の話をお聴きになった方から、「一度うちの近所の立派なヤドリギを見に来てほしい」と連絡があった。そういえばあの時ヤドリギの話もしたかもしれない。
 公民館で待ち合わせ、案内されたのは、西に鹿野山を望む小糸川沿いの平野の一角(写真1)。近寄っていくと、立ち並ぶビニルハウスの向こうの屋敷林にケヤキの大木がそびえ、枝についた多数の丸いシルエットが見えてきた(写真2)。
 案内してくれた方の知人であるお屋敷の主にご挨拶して庭に入れていただいた。目指すケヤキの根元に立って見上げると、樹高15メートルほどのケヤキに大小50個ほどのヤドリギが寄生している壮観な景色であった(写真3)。
 お屋敷の主にお話をうかがった。

「立派なヤドリギを見せてくださって、ありがとうございます」
「ずっと前からこんなだから、気にも留めていなかったけんが、こんなもんに関心がある人もいるんだねぇ」
「はい。私はヤドリギの分布を調べています」
「これは珍しいもんなんかい?」
「どちらかというと珍しいんですが、あるところにはたくさんあったりします。分布が偏っているところが不思議で、調べています」
「そうかい。ごくろうさまだねぇ。そういえば、近所の人で『うちのケヤキにはなんもついていねぇ。お宅にはヤドリギがいっぺぇついててうらやましい』っていう人がいたなぁ」
「うらやましがられたんですか?」
「そうだ」
「それはおもしろいお話ですねぇ」

 多くの人はヤドリギにとくに関心がなく、たいていは見過ごされている。近所のヤドリギをうらやましがる人のお話はとても新鮮だった。
 (尾崎煙雄)

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写真1
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写真2
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写真3
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 ヤドリギ Viscum album subsp. coloratum(ビャクダン科)

 


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