No.1590 2018/03/14(水)
フサザクラ
清和県民の森の渓谷沿いにて。対岸の斜面に生えた落葉樹の枝が色づいていた(写真1)。フサザクラの花だ(写真2)。 その名に違いフサザクラはサクラの仲間ではない。フサザクラの花にはサクラのような花びらはなく、濃い赤色は多数の雄しべの葯(やく)である(写真3)。葯とは雄しべの先の袋状の部分で、中には花粉が入っている。 フサザクラの花には雄しべしかないようにも見えるが、ちゃんと雌しべもある。写真4の中央に10個ほど見えている白っぽい小さな楕円形のものが雌しべである。 深紅の雄しべで目を惹くフサザクラの花ではあるが、役目を終えた雄しべは間もなく脱落してしまう。そして初夏には独特の形の緑葉が茂り、花の存在など忘れられてしまう(写真5)。しかし花の時にはまったく目立たなかった雌しべはずっと残っていて、晩秋の落葉期には多数の「しずく形」の果実となって裸になった枝にぶら下がっている(写真6)。 (尾崎煙雄)
フサザクラ Euptelea polyandra(フサザクラ科)