No.1670 2019/2/21(木)

 ヒメコマツの生える崖


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 ヒメコマツの調査のため、房総丘陵のある山に入った。ヒメコマツは山地性の植物で、標高が低く温暖な千葉県に分布することがそもそも珍しい。近年、千葉県内では個体数の減少が著しく、絶滅が危惧されている。
 この日の目的はヒメコマツの若い個体を確認すること。千葉県全体でも100個体以下と推定されるヒメコマツだが、日本人と同様に「少子高齢化」が進んでおり、自然に散布された種子から発生した若木の存在はとても貴重だ。この調査の難しいところは、若木の多くが崖に生えていること。ロープで安全確保しながら調査しなければならない。写真1は高さ2メートルほどの有望な若木で、垂直な崖の頂部から2メートルほどの位置に根付いている。ここまで成長するのに少なくとも20年以上かかっているものと推定される。
 ヒメコマツが生える崖は貴重な植物の宝庫だ。付近にはヒカゲツツジの立派な株も見つかった(写真2)。ヒカゲツツジはヒメコマツと同様に山地性の植物で、温暖な千葉県では珍しい。また、同じ崖にはマメヅタランの群生も見つかった(写真3)。マメヅタランは先の2種とは対照的に南西諸島などにも分布する南方系の植物で、この場所はその北限に近い。さまざまな起源を持つ稀少植物が生育する崖地は千葉県の生物多様性を考える上で重要な存在だ。
 (尾崎煙雄)

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写真1
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写真2
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写真3
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 ヒメコマツ Pinus parviflora var. parviflora(マツ科)

 ヒカゲツツジ Rhododendron keiskei(ツツジ科)

 マメヅタラン Bulbophyllum drymoglossum(ラン科)

 


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