No.1696 2019/5/16(木)

 クチキクシヒゲムシ


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 清澄山系にて。枯れかけたマテバシイの幹にクチキクシヒゲムシのペアがいた(写真1)。下の大きい方が雌で体長15ミリほど。コガネムシの仲間のような姿をしているが、まったく別のクシヒゲムシ科に属する希少な甲虫である。その生態もよくわかっておらず、幼虫の餌も判明していない。

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写真1
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 交尾中のこのペアにもう1匹の雄が近寄ってきた(写真2)。交尾中の雄を雄A、後から来た方を雄Bとする。雄Bはクシヒゲムシの名の由来でもある櫛状の触角を扇のようにひろげ、翅もひろげてさかんにちょっかいを出している。雄Aと取って代わって雌と交尾したいのだろう。雄Aの方は触角も翅もたたんでじっと雌の背中にしがみついている。雄Bは雌の腹の下にもぐり込んだりして邪魔をするが、雄Aの交尾器はしっかり雌の交尾器につながっていて離れない(写真3)。

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写真2
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写真3
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 そのうち雄Bは触角と翅をいっぱいにひろげて雌の前を行ったり来たりし始めた(写真4、5)。翅をひろげていても羽ばたかず、飛ぼうとしているわけではない。これはクチキクシヒゲムシの雄の求愛行動なのだろうか。

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写真4
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写真5
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 クチキクシヒゲムシは全国に分布するが、どこでも希少種とされており、千葉県でも記録は少ない。我々の調査の結果、清澄山系では30個体以上のクチキクシヒゲムシを記録しているが、そのすべてが4〜5月の1ヶ月ほどの期間に集中している。生態が不明で、発生期間も限られていることから記録が少ないのだろう。
 (尾崎煙雄)

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 クチキクシヒゲムシ Sandalus segnis(クシヒゲムシ科)

 


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