No.1710 2019/06/28(金)

 トビモンオオエダシャク


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 三島小教室博物館の近くにお住まいのNさんが、「この枝みたいな虫は何だろう?」といって写真1の幼虫を持って来られた。体長7センチを超える大きなイモムシだ。

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写真1
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 「これはトビモンオオエダシャクというガの幼虫ですね」とお答えして、成虫の写真を見せた(写真2)。シャクガ科に属するこのガの幼虫はいわゆる「尺取り虫」で、頭に2つの大きな突起があり、まるでウサギの耳を思わせる(写真3)。

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写真2
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写真3
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 尺取り虫の中でも大型のこの幼虫は、枝に身体の後端を固定して全身をまっすぐに伸ばした姿勢で静止することがある(写真4)。その姿はまるで枯れ枝そのもので、動かなければなかなか気づかない。この尺取り虫は別名「土瓶割り」と呼ばれるそうだ。野良仕事に出かけたお百姓さんが水筒代わりに持参した土瓶を手近な木の枝に掛けようとして、虫とは気づかずにこの尺取り虫に掛けてしまい、落ちた土瓶が割れるという言い伝えである。

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写真4
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 もしかしたら、ウサギの耳のように見える頭の突起にも枝に似せる意味があるのかも知れない(写真5)。そう思って三島小の校庭にあるコナラの枝を観察すると、その冬芽の形や付き方はトビモンオオエダシャク幼虫の頭の突起と似ているような気もする(写真6)。頭の突起だけでなく、3対の歩脚も枝の先端近くの冬芽に見えなくもない。ここまでして擬態の完成度を高めているのだろうか。
 (尾崎煙雄)

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写真5
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写真6
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 トビモンオオエダシャク Biston robustus robustus(シャクガ科)

 コナラ Quercus serrata(ブナ科)

 


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