No.1722 2019/08/05(月)

 アカヒゲドクガ


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 房総丘陵の森にて。ツガの幹に毛虫がいるのに気づいた(写真1)。毛を含めた体長は7センチほどの大きな毛虫だが、樹皮の上でじっとしているので見つかりにくい。

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写真1
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 この毛虫はアカヒゲドクガの幼虫だ(写真2)。その容姿は毛虫界でも屈指のインパクトで、毛虫嫌いの人なら間違いなく逃げ出すレベル。しかし私はこの毛虫のデザインのすばらしさに感心する。

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写真2
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 幼虫の身体の前後左右に、ほぼ水平に毛が密生している。毛には黒くて長い毛と、白くてやや短い毛の2タイプがある。白い方の毛には羽毛状の分枝がある(写真3)。これらの水平な毛によって幼虫の身体は大きく扁平に見え、その輪郭ははっきりしない。見事に身を隠している。

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写真3
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 多くの有毒種を含むドクガ科に属し、その見た目からも、いかにも毒がありそうに見える毛虫だが、少なくとも私は触ってもまったくかぶれない(写真4)。写真のように手に載せると、くすぐったいようなふわふわとした手触りで意外と気持ちがよい。ただし、人によっては反応が違う可能性もあるので、ご注意いただきたい。

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写真4
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 ふつう、木の幹に止まっているのを見ることが多いこの幼虫だが、別の日に森の地表にいるのを見つけた。幹にいるときはじっとして動かないのだが、地表にいた幼虫はものすごい勢いで歩いていた(写真5)。この幼虫がこんなに速く歩くのを初めて見た。きっと、樹皮の上では目立たない自分の姿が、落ち葉の積もった地表ではうまく隠れられないことを知っていて、安全な場所に向けて全速力でダッシュしていたのだろう。
 (尾崎煙雄)

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写真5
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 アカヒゲドクガ Calliteara lunulata(ドクガ科)

 


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