No.1731 2019/09/15(日)

 台風で倒れたケヤキ


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 2019年9月8日から9日にかけて千葉県に上陸し通過した台風15号は強風により多くの被害を残していった。建物やインフラの被害状況は盛んに報道された。しかし、さし当たり人の暮らしに直結しないような影響は報じられない。そんな一例をここに記録しておきたい。
 君津市内、小櫃川中流域の農地の脇に立派なケヤキが2本並んで立っていた(写真1)。2本とも太さ70センチほど、高さ15メートル以上の大木だ。

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写真1 2015年11月5日撮影
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 2本のうちの手前のケヤキには多数のヤドリギが寄生していた。ヤドリギはもう少し細い枝に寄生することが多いのだが、なぜかこのケヤキでは太い大枝にばかり寄生しているのが珍しく、通りかかるたびに見上げて眺めていた(写真2)。

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写真2 2019年1月18日撮影
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 大枝だけでなく太さ70センチほどもある幹のまん中にも寄生していて、ヤドリギの寄生位置の多様性がどのようにして決まるのかを考えさせられる存在だった(写真3)。

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写真3 2019年1月18日撮影
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 そんなふうに、私にとっては顔なじみのようになっていたケヤキが台風15号の強風で倒れてしまった(写真4)。根ごと倒れる「根返り」という状態である。倒れた梢は北西の方角を向いている。周りに大きな木はなく、平野の真ん中に2本だけ孤立して立っていた木なので、さえぎるもののない南寄りの強風をもろに受けてしまったのだろう。並んで生えていたもう1本のケヤキが無事だったのは倒れたケヤキが風よけになってくれたからなのかもしれない。

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写真4
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 倒れたケヤキに登ってみた(写真5)。枝の折れ痕が痛々しい。しかし、大木の太枝に寄生したヤドリギを間近で観察できる貴重な機会でもあった。

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写真5
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 ヤドリギの枝にアマガエルが止まっているのが目に入った(写真6)。木に登る習性のあるアマガエルがここにいることは不思議ではない。

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写真6
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 ところが、アマガエルは1匹ではなかった。ここにも、あそこにも、と数えてみると写真に写っているだけで5匹(写真7矢印)。この他にも別のヤドリギの枝にアマガエルが止まっていて、合計10匹以上がみつかった。みなケヤキではなくヤドリギの枝に止まっている。いったいこれはどういうことなのだろう。顔なじみのケヤキから、また新しい謎をかけられたような気がした。
 (尾崎煙雄)

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写真7
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 ケヤキ Zelkova serrata(ニレ科)

 ヤドリギ Viscum album subsp. coloratum(ビャクダン科)

 ニホンアマガエル Hyla japonica(アマガエル科)

 


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