No.1736 2019/10/06(日)

 マコモタケ


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 田んぼマイスターの脱穀作業の後、参加者の佐藤悦子さんから、「これマコモタケと言うのですが、ちょっと食べてみませんか」と勧められた。見た目は白っぽいタケノコあるいはホワイトアスパラ?のようだ(写真1)。生でも食べられるというのでちょっとかじってみると、程よい歯ごたえと癖のないあっさりとした味。「炒めてもおいしいですよ」ということだったので、家に帰って少量の肉と一緒に炒めてみたら、食感が良く、とてもおいしかった。

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写真1 外側の黄緑色の中の白っぽい部分がマコモタケ(佐藤悦子氏提供)
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 マコモタケというのは、「マコモ」というイネ科マコモ属の植物の根元の肥大した茎の部分を指し(写真2)、そこが食用となっている。マコモは田んぼや水辺のような環境のところでぐんぐん成長し、巨大なイネのようになるという(写真3)。佐藤さんは数年前から君津の三舟山のふもとの田んぼでマコモを育てているそうだが、バケツ栽培でも収穫できるという(写真4)。美味しいだけでなく、体にも良いということで、少しずつ知られるようになってきたそうだ。田んぼマイスターの収穫祭の時には、マコモタケのきんぴらを作ってきてくれた(写真5)。これがまたとても美味しかった。

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写真2 マコモの茎の部分が肥大化したようす(佐藤悦子氏提供)
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写真3 田んぼの隅で成長するマコモ(佐藤悦子氏提供)
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写真4 バケツ栽培のマコモ(佐藤悦子氏提供)
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写真5 佐藤悦子さん作の「マコモタケのきんぴら」
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 中央博の菌類担当によると、マコモは黒穂菌(担子菌類クロボキン科のマコモ黒穂菌)というものに感染しやすく(理由はよくわかっていない)、寄生した黒穂菌の影響で菌えい(虫こぶのようなもの)をつくり、茎が肥大化するのだそうだ。ちなみに収穫しないでおくと、黒穂菌が増殖し続けて胞子をつくり、「マコモ墨」と呼ばれる黒い粉状のものになる。こうなると食用にはならないが、古い時代には眉墨などに利用されていたそうだ。また伝統美術工芸品である「鎌倉彫」の古色を出すためにも、マコモ墨が使われているという(吹春公子,2005)。何やら奥が深そうで、興味深い。

 
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【文献】
吹春公子(2005):マコモ栽培とそれにまつわるエピソード. 千葉菌類談話会通信 20号, 15-17.

 (八木令子)

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 マコモ Zizania latifolia(イネ科)

 マコモ黒穂菌 Ustilago esculenta(クロボキン科)

 


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