教室博日記 No.1761

 2020/1/14(火)

 ブルーシート

 正月明け、久しぶりに清和公民館の下を流れる小糸川にかかる「粟倉橋」(写真1)のそばを通った。

  • 写真1 小糸川にかかる粟倉橋(2020年1月14日)

 川の左岸には大きなブルーシート(写真2)。昨年10月25日の台風21号関連の集中豪雨で発生した渓岸崩壊の現場だ。

  • 写真2 大きなブルーシートがかかった小糸川左岸の崩壊現場(2020年1月)

 実はこの崩壊が発生した直後の10月26日早朝、中央博の山のフィールド・ミュージアム担当の尾崎、平田和彦、八木の3人は、清和公民館の文化祭に参加するため、それぞれこの場所を通っていた。私は文化祭の準備もそこそこに(尾崎さんにお任せして)、平田さんと一緒に橋の上まで行き、崖の途中からまだ水が吹き出し、時折土砂が流れている様子を見ていた(写真3)。その後川の近くをうろうろしていると、直近(崩壊の源頭部から10mも離れていない)の家の方が出て来て、前日の集中豪雨の様子を詳しく教えて下さった。

  • 写真3 発生から数時間後の崩壊現場(2019年10月26日早朝)

 その方のお話によると、この崩壊は、激しい雨が続いた10月25日午後から夕方にかけて発生したのではなく、すでに雨が止んでいた25日の深夜から26日未明に崩れたということである(朝見たら崩れていた)。雨が降り続いている時には、小糸川の水位は数メートル上がっていた(写真3のコンクリート護岸の少し上方の帯状に草が生えているあたりまで水がかぶった)ということだが、水位上昇と崩壊発生には多少のタイムラグがあったようだ。またすぐ横の崖下がコンクリートで覆われた部分は、2017年秋の台風による豪雨で崩れた場所で、その後現在のように修復されたという。今回は隣接する場所が被害に遭ったが、そこは背後に人が住む家がないので(建物はあるが人が住んでいない)、前回の災害復旧では、護岸の対象にならなかったということである。さらに今から50年ほど前に、房総丘陵や下流の低地に被害をもたらした45年災害(昭和45年7月の集中豪雨による災害)の時には、もっと高い位置まで小糸川の水位が上がったが、このあたりで渓岸崩壊は起こらなかったということも話しておられた。このような現地の人から直接聞いた話は、この地域の崩壊のメカニズムや、災害復旧のあり方を考える上で重要な情報となる。

 さてあれから3ヶ月、状況はどのように変わったのだろうか。再び同じ方にお話を伺ったところ、その後河川を管理している千葉県が調査に入り、ボーリング(地質調査)や測量を行った後、ブルーシートを張り、現在復旧方法の検討、手続きを行っているところだという。できるだけ早く修復してほしいが、県内各地で被害が発生しているので、少し時間がかかるのではないかと懸念しておられた。確かに君津地域だけでも、まだあちこちにブルーシートがかかる建物や崖が見られる。集中豪雨や台風の季節が再びやってくる前に、すべてのブルーシートが取り除かれるよう願っている。

(八木令子)