教室博日記 No.1765

 2020/01/29(水)

 チバニアンらしい鳥

 2020年1月17日、国際地質科学連合によって、市原市田淵の地磁気逆転地層を含む地層「千葉セクション」を、前期−中期更新世境界のGSSP(国際境界模式層断面とポイント)とすることが認定された。そして、その地質年代(約77万4千年前~約12万9千年前)を「チバニアン」と呼ぶことが決まった。私たちの地元「千葉」の名が、世界共通の地質年代の名前に刻まれることは、非常に嬉しいし、誇らしいと思う。

 そこで、市原市田淵の「千葉セクション」を訪れ、「チバニアンらしい鳥」はいないだろうかと探してみた。「チバニアン」とは地質年代の名称なので、正確には「千葉セクションがGSSPであることを感じさせる鳥」といったところだろうか。

 現地に到着すると、前日の大雨により養老川が増水していたため、あいにく地層まで到達することはできなかった(写真1)。しかし、不動滝から注ぐ支流が養老川に合流するあたりで、1羽の鳥を観察することができた。

  • 写真1 増水していた「千葉セクション」周辺の養老川

 キセキレイである(写真2)。キセキレイは、日本に生息するセキレイ類の中でも、特に山奥の小川や渓流でもよく見られる印象がある。

 「千葉セクション」は更新世という比較的最近に堆積した地層であるにもかかわらず、速い隆起速度のため山中にあり、河川の侵食を受けてその断面が見られることが、認定を大きく後押しした。そう考えると、いかにもこのような環境を好む水鳥であるキセキレイは、「チバニアンらしい鳥」と言えるだろう。

  • 写真2 キセキレイ

 そんなキセキレイが、水浴びをし始めた。岸辺で体を震わせるでもなく、尾羽をだらっと広げて水面に浮かべるようにして、大人しくしている(写真3)。水浴びよりも、入浴という表現がぴったりだ。普段は閉じていて、しかもひっきりなしに上下させていて、あまりよく観察できない尾羽の色や模様を、じっくりと観察することができた。

  • 写真3 “入浴”するキセキレイ

 「千葉セクション」の周辺には、深い谷の地形だけでなく滝などの、河川が大地を侵食してきた時間を感じられる景色が広がっている(写真4)。そんな環境でどんな生物がどのように暮らしているのか注目すれば、いっそう「チバニアン」を楽しめるかもしれない。

  • 写真4 不動滝(奥)を経て養老川に注ぐ支流
  • キセキレイ Motacilla cinerea(セキレイ科)

(平田和彦)