教室博日記 No.1830

 2020/07/02(木)

 堰が開いた江川の放水路

 今年は梅雨入り直後からうっとうしい天気となり、6月下旬には千葉でもまとまった雨が降り続いた。小糸川下流域も茶色の水が流れ、水位が上がった(写真1、2)。

  • 写真1 小糸川釜神橋より上流を眺める(6月12日)
  • 写真2 1と同じ場所から(7月2日)。6月下旬の雨で水位が上がっている

 久しぶりに晴れわたった7月初旬、小糸川支流の江川流域を再び歩いた。先月の教室博日記(No.1818)に書いたが、昭和20年代くらいまでは、江川は分流している派川江川の方に流れており(図1)、下流(×印のところ)で小糸川本流と合流していた。従って現在の江川が小糸川本流と合流する200mくらいの区間(赤丸の部分)は、自然の水路ではなく、人工的な放水路である。

  • 図1 君津市洪水ハザードマップ その1 小糸川下流域(部分に加筆)
  • 黄色や水色で塗られた部分は、小糸川流域の24時間の総雨量360mmによって氾濫した場合の浸水想定区域

 梅雨入り前の6月初旬にこの辺りを歩いた時は、江川を流れる水は放水路の手前に作られた堰で止められ(写真3)、派川江川の方に分流していた。しかし梅雨の長雨で小糸川本流の水位が上昇したためか、その堰が開き(ゴム製の堰なので、風船が縮むように見事にしぼんでいる)、放水路の方に水が落とされて(写真4)、小糸川に合流していた(写真5)。一方堰より上流側の江川は、以前は街なかを流れる河川としてはやや水位が高かったが(写真6)、今回は逆に川底が見えているような状態になっていた(写真7)。

  • 写真3 江川にかかるゴム製の堰、写真中央が派川江川への分水路(6月5日)
  • 写真4 堰が開き放水路に水が流れる、水位は分水路(赤丸)の高さより下がっている(7月2日)。ふだんは青線のところまで水がある
  • 写真5 放水路と小糸川本流の合流地点
  • 写真6 街なかを流れる江川(6月5日) 意外に水位が高い
  • 写真7 放水路が開いて1mくらい水位が下がっている(7月2日)

 江川に放水路が作られたのは、以前は大雨が降ると、小糸川本流の旧流路跡を含む中富地区などに水が集中し、洪水の被害を受けることが多かったからである。現在では雨が続いて水位が上がると、今回のように堰を開いて上流で直接小糸川本流に水が流れ込むようにし、低い地域へ水が集中しないようにしている。江川は中流で市街地からの生活排水や農業排水があちこちから流れ込んできており(写真8)、集中豪雨で川の水位が上がると、それら排水が流れ込めなくなり、逆流してしまうかもしれない。そうなると川の水が溢れる洪水ではなく、街なかの水がスムーズに排水できないことで発生する内水氾濫(ないすいはんらん)という災害が起こる可能性がある。江川の放水路はそのような都市水害を防ぐ役目も担っている。

  • 写真8 江川に流れ込む生活排水

(八木令子)