教室博日記 No.1842

 2020/08/01(土)

 ホンゴウソウ

 房総丘陵にて。ヒナノシャクジョウが咲いていた場所の近くでホンゴウソウを見つけた(写真1)。草丈は3センチほどで、全体に赤紫色をしていて葉緑素はまったくない。茎には痕跡的な鱗片状の葉があり、茎の上部に花をつける。ヒナノシャクジョウと同様に菌類から栄養を得て生活する菌従属栄養植物(きんじゅうぞくえいようしょくぶつ)であり、ヒナノシャクジョウと同じ場所に生えることがしばしばある。

ホンゴウソウの草姿
  • 写真1

 別の場所で、同行者がホンゴウソウを見つけた(写真2)。千葉県内ではホンゴウソウの記録は少ない。生育地が限られていて数が少ないことは確かだと思われるが、小さくて色も目立たないホンゴウソウはヒナノシャクジョウに比べて格段に見つけにくいことも大きな要因だろう。

  • 写真2 花が終わりかけのホンゴウソウ

 森の地表に生息する他の生物を調査しているときに「偶然」ホンゴウソウを発見することがある。ときには10本近くの茎が束になって生えた「大株」に出会うこともある(写真3)。

  • 写真3 ホンゴウソウの大株

 8月はホンゴウソウの開花期だ。ホンゴウソウには雄花と雌花があり、1本の茎の先端部に雄花が、その下の茎の途中に雌花がつく(写真4)。雄花も雌花も大きさは1ミリ半ほど。

  • 写真4 開花中のホンゴウソウ

 茎の先端の雄花には6枚に分かれた花びらがあり、中心にある雄しべから黄色い花粉が出る(写真5)。下に見える雌花は多数の雌しべが集まって球状になり長く伸びたひげ状の柱頭(ちゅうとう)が目立つ(写真5)。

  • 写真5 花のアップ

 花が咲き終わると雄花は脱落してしまうが、雌花の方は柱頭がしおれるだけで見た目はあまり変わらずに果実へと変化する。写真2は雌花が終わりかけている時期である。果実は秋まで残り草姿もあまり変わらないのでホンゴウソウは秋にも見つかることがある。

  • ヒナノシャクジョウ Burmannia championii(ヒナノシャクジョウ科)
  • ホンゴウソウ Andorius japonica(ホンゴウソウ科)

(尾崎煙雄)