教室博日記 No.1866

 2020/09/16(水)

 クモノスシダ

 君津市内にて。苔むした岩場に細長い葉のシダ植物が生えている(写真1)。葉の長さは長いもので10センチほど。小形のシダである。

  • 写真1 岩場に生えたクモノスシダ

 この植物には面白い習性がある。写真2の丸で囲んだ部分に注目してほしい。細長い葉の先がさらに細く糸のように伸び、その先端に丸く小さな葉が3枚ある。

  • 写真2 葉の先を伸ばしたクモノスシダ

 このような様子はこの岩場のあちこちで見られる。伸びた葉の先端部をアップにしてみると写真3のようになっている。写真3の場合、左上方から糸のように伸びてきたクモノスシダの葉の先端が岩の表面に「着地」し、そこから小さな葉が3枚生えている。たとえばイチゴは「ランナー」と呼ばれる茎を横に伸ばして、その先に新たな株を生じて殖えることができる。クモノスシダは葉の先を「ランナー」のように伸ばして殖えることができるのだ。

  • 写真3 クモノスシダの葉の先に生じた子株

 まだ「着地」せずに葉先が空中にあるうちに子株を生じているものもあった(写真4)。根のようなものも見える。着地と同時に子株が生長できるように準備ができているのだろう。

  • 写真4 クモノスシダの葉の先のアップ

 株の中心から「ゼンマイ」のような新葉を伸ばしている株があった。これを見るとシダ植物らしいと感じる。

  • 写真5 クモノスシダの「ゼンマイ」
  • クモノスシダ Asplenium ruprechtii(チャセンシダ科)

(尾崎煙雄)