教室博日記 No.1867

 2020/09/16(水)

 ヤマホトトギス

 君津市内にて。雨の森の中でヤマホトトギスの花が咲いていた(写真1)。このヤマホトトギスは草丈30センチほどで、シダ植物などに混じって平らな地面に生えている。茎の先端に数個の花がまばらに咲く。

  • 写真1

 ヤマホトトギスの花は複雑な形に見える(写真2)。上を向いて咲いた花の下部に6枚の白い花びら(花被片;かひへん)があり、花びらには赤紫色の斑点がある。花の中心からは柱が立ち上がっていて、その先端は放射状に広がっている。これらは雌しべと雄しべだ。雌しべの先端(柱頭;ちゅうとう)には花びらと同様に赤紫色の斑点があり、放射状に3つの裂片に分かれ、それぞれの裂片の先はさらに二叉に分かれていてまるでヘビの舌先のようだ。柱頭の下に6本の雄しべ(花糸;かし)があり、やや下を向いた先端には花粉を収めた葯(やく)がついている。

  • 写真2 ヤマホトトギスの花

 ホトトギスの仲間のうち房総丘陵でよく見られるのはホトトギスという種で、こちらは崖や土手のような垂直に近い斜面から垂れ下がるようにして生えていることが多い(写真3)。ホトトギスの花はヤマホトトギスと違って茎の途中の葉の付け根に1個ずつ咲く。

  • 写真3 崖に垂れ下がって生えるホトトギス(2019/10/23清澄山にて)

 ホトトギスの花はその模様もヤマホトトギスと異なり、花びらと柱頭だけでなく、雄しべ(花糸と葯)にも赤紫色の斑点がある(写真4)。また、ホトトギスの花びらは斜め上に向かって立ち上がっている。

  • 写真4 ホトトギスの花のアップ(2012/11/09三島小にて)

 ヤマホトトギスの花のもう一つの特徴は花びらが反り返って垂れ下がること(写真5)。ホトトギスの花と比べると、全体に白っぽく、可憐な印象を受ける。

  • 写真5 真横から見たヤマホトトギスの花
  • ヤマホトトギス Tricyrtis macropoda(ユリ科)
  • ホトトギス Tricyrtis hirta(ユリ科)

(尾崎煙雄)