教室博日記 No.1872

 2020/10/08(木)

 ホトトギス

 清澄山系にて。道脇の崖に生えたホトトギスにつぼみがついていた(写真1)。

  • 写真1

 垂れ下がるように生えた茎に葉が互い違いにつき、それぞれの葉の付け根に1ないし2個のつぼみがある(写真2)。

  • 写真2 ホトトギスのつぼみ

 2週間後に同じ場所を訪れた。緑色で小さかったつぼみは数倍にふくらみ、表面は白く内側の赤紫色がにじむように見えている(写真3)。

  • 写真3 ふくらんだホトトギスのつぼみ(2020/10/22)

 咲き始めた花もあった(写真4)。6枚の花びらが割れるように開き始めている。

  • 写真4 咲き始めのホトトギスの花(2020/10/22)

 咲き始めの花を上から見ると雌しべと雄しべが見えている(写真5)。たくさんの水滴のようなものは雌しべの先端の柱頭(ちゅうとう)に生えた繊毛である。

  • 写真5 真上から見たホトトギスの花(2020/10/22)

 開花がほぼ完了した花もある(写真6)。花びらも雌しべも雄しべもまだ伸びきってはおらず、羽化直後のチョウの翅のようだ。

  • 写真6 ほぼ開花したホトトギスの花(2020/10/22)

 ホトトギスの花の付け根には全部で3つのふくらみがある(写真7)。この部分を距(きょ)と呼び、蜜がたまる袋のようなものである。

  • 写真7 ホトトギスの距(2020/10/22)

 展開したホトトギスの花の中をのぞき込むと奥に黄色い模様がある(写真8)。これは花を訪れるハチなどの昆虫に蜜の場所を教えるための目印で、蜜標(みつひょう)という。蜜標のすぐ先に距にたまった蜜がある。

  • 写真8 ホトトギスの蜜標(2020/10/22)

 葉の付け根ごとに1ないし2個ずつ花を咲かせる個体が多いが、ときには花数の多い株もある。写真9の株はつぼみも含めて各節に3つずつ花をつけていた。おそらく栄養状態がよいのだろう。

  • 写真9 花数の多いホトトギスの株(2020/10/22)

 逆に長さ10センチほどの短い茎に5枚だけ葉をつけた小さな株もあり、1つだけ花を咲かせていた(写真10)。栄養状態がよくなくても花を咲かせる能力があるようだ。

  • 写真10 1花だけ咲かせたホトトギス(2020/10/22)
  • ホトトギス Tricyrtis hirta(ユリ科)

(尾崎煙雄)