教室博日記 No.1888

 2020/11/05(木)

 シロダモ

 清澄山系にて。常緑広葉樹のシロダモが開花期を迎えた(写真1)。目立たない花なので、遠目には咲いていることに気づかない。

  • 写真1 シロダモ

 シロダモは雌雄別株。雄株には雄花が咲いている(写真2)。

  • 写真2 シロダモの雄花

 雄花には雄しべばかりがある。

  • 写真3 シロダモの雄花

 雄花の雄しべの付け根には「腺体」と呼ばれる塊があり、蜜を出している。

  • 写真4 シロダモの雄花

 雄しべの先端の葯(やく;花粉を入れた袋状の器官)を拡大して見ると面白い形をしている(写真5)。葯には穴が空き、まるで突き出し窓のように蓋が開いている。蓋の裏側にはびっしりと花粉がついている。このような葯の開き方を「弁開(べんかい)」といい、クスノキ科の樹木の特徴である。

  • 写真5 弁開するシロダモの葯

 一方、雌株には真っ赤な実がついている(写真6)。実がついているのは昨年伸びた枝で、今年伸びた枝との境目(水色の矢印)には数枚の葉が密集しているのですぐわかる。今年伸びた枝の中ほどには雌花のつぼみがある(黄色の矢印)。つぼみから果実が赤く熟するまでにはほぼ1年かかる。つまりこの写真にはシロダモの雌株の一年が写っていることになる。

  • 写真6 シロダモの雌株
  • シロダモ Neolitsea sericea(クスノキ科)

(尾崎煙雄)