教室博日記 No.1902

 2020/12/18(金)

 ブドウトリバ

 清澄山系にて。ブドウトリバというトリバガの一種を見つけた(写真1)。このように身体とほぼ直角に翅を開いて止まるガは珍しいが、トリバガ科の特徴である。後脚はたたんでピッタリと体に付けて、前中脚の4本の足で葉に止まっている。脚には長い棘がある。この棘を何に使うのだろうか。

  • 写真1 翅を広げて4本の脚で葉にとまっているブドウトリバ

 採集して、葉に止まっているときは見えなかった後翅を意識して展翅した(写真2)。開張(翅を広げた時の幅)は17ミリ。標本を観察すると、翅の構造が良く判った。

  • 写真2 ブドウトリバの展翅標本(標本番号 CBM-ZI 224436)

 前翅の先は大きく分岐し、先端には白い毛、分岐した部分の内側とうしろの部分には白黒の毛を備えていた。後翅は3つに分かれ、それぞれの周囲には極細の黒い毛が密に生えている。3つ目の部分の先端には長い鱗片を備えていた。同じ機能を持つかどうかはわからないが、まるで鳥の風切り羽のようだ。前翅に隠れていた後翅の造形は前翅に劣らない、すばらしい造形だ。

  • ブドウトリバ Nippoptilia vitis(トリバガ科)

(斉藤明子)