教室博日記 No.1922

 2021/03/04(木)

 ヒレンジャク

 木更津市内にて。たくさんのヤドリギに寄生されたエノキがある(写真1)。

  • 写真1 多くのヤドリギに寄生されたエノキ

 度々観察に訪れていたのだが、この日は幸運にもレンジャクの群れに出会った(写真2)。レンジャク類は冬に日本に来る渡り鳥で、ヤドリギの果実を好むことが知られている。この群れもヤドリギの上に集まってしきりに実をついばんでいた。

  • 写真2 ヤドリギに群がるヒレンジャクの群れ

 レンジャク類にはヒレンジャクとキレンジャクという互いによく似た2種がいて、しばしば混群を形成する。この日出会ったのは10羽の群れで、すべてがヒレンジャクであった。尾羽の先端の緋色(ひいろ;茜で染めた赤い色のこと)が特徴で(写真3)、キレンジャクはここが黄色い。眼の周りの隈取りのような黒い羽や、頭頂を飾るたてがみのような羽がおしゃれだ。

  • 写真3 ヒレンジャク

 私が近づいたのに驚いて飛び立ち、高い送電線に並んで止まった(写真4)。等間隔に距離を取って止まるところが興味深い。

  • 写真4 送電線に止まったヒレンジャクの群れ

 ヒレンジャクの群れが去った後のエノキをよく見ると、そこここの枝に糸を引くようにして垂れ下がった糞が引っかかっていた(写真5)。糞には未消化のヤドリギの種子が含まれ、種子の周囲の粘液によって垂れ下がる。ヤドリギはこうやって枝から枝へと分布を拡げていくのだ。

  • 写真5 ヒレンジャクの糞
  • ヤドリギ Viscum album subsp. coloratum(ビャクダン科)
  • エノキ Celtis sinensis(アサ科)
  • ヒレンジャク Bombycilla japonica(レンジャク科)
  • キレンジャク Bombycilla garrulus(レンジャク科)

(尾崎煙雄)