教室博日記 No.1963

 2021/05/24(月)

 地蔵堂層の模式地

 木更津市地蔵堂の県道168号線沿いでは、貝類などの化石を含む地層が観察できる(写真1)。この場所は地蔵堂層と呼ばれる約40万年前の地層の模式地となっており、解説板も立っている(写真2)。

  • 写真1 地蔵堂層の模式地
  • 写真2 解説板

 崖の下部は崩れた土砂で埋まっているため、解説板にあるJ3軽石層は、現在では観察しづらくなっている。崖に近付いて観察すると、泥質砂層中に二枚貝のヒヨクガイとビロードタマキが多い(写真3)。これらの二枚貝は現在の海にも生息し、黒潮の影響を受ける暖かい海に多いようだ。腕足類は二枚の殻を持ち二枚貝のように見えるが、二枚貝を含む軟体動物とは まったく別の腕足動物と呼ばれる仲間で、丸い穴(写真3の赤色三角)から軟体部を出して、岩や貝殻に付着して暮らしている。丸っこくてかわいらしいフォルムだ。単体サンゴが多い点も特徴的だ。サンゴ礁を作らず単独で成長するタイプのサンゴで、球形(写真4)や扇形(写真5)など多様な形をしている。

  • 写真3 様々な化石(黄色三角がヒヨクガイ、緑色三角がビロードタマキ、赤色三角が腕足類)
  • 写真4 球形の単体サンゴ(黄色三角)
  • 写真5 扇形の単体サンゴ(黄色三角)

 解説板を左手に見て少し進むと、左手に崖が見える。この崖では、これまで見た層準の上位が観察しやすい。化石は少なくなるが、二枚貝のベニグリ(写真6)などが見られる。右側のベニグリは二枚の殻がそろっている。

  • 写真6 二枚貝化石(ベニグリ)

 解説板で紹介されているJ4火山灰層は淡紅褐色で、当時の海底に生息していた生物の活動で少し乱されている(写真7)。

  • 写真7 J4火山灰層

 道路沿いでアクセスも良く、解説板を見ながら地層や火山灰、様々な化石を観察できるので、オススメの場所だ。

  • ヒヨクガイ Cryptopecten vesiculosus(イタヤガイ科)
  • ビロードタマキ Glycymeris pilsbryi(タマキガイ科)
  • ベニグリ Glycymeris rotunda(タマキガイ科)

(千葉友樹)