教室博日記 No.1986

 2021/07/14(水)

 サラサエダシャク

 清澄山系にて。夜間ライトトラップに飛来したサラサエダシャク(写真1)。大きさはモンシロチョウほど。翅を閉じてとまるのでチョウのように見えるが、これはガの仲間。

  • 写真1 サラサエダシャク 2021/07/14清澄山系にて

 「チョウとガの違いは?」という問いは昆虫担当学芸員を悩ます難問の代表格だ。「翅を開いてとまるのがガで、閉じてとまるのがチョウ」という見分け方がある。たしかに、ガの大半は写真2のように翅を開いてとまる。

  • 写真2 ホソバスズメ 2010/07/14清澄山系にて

 一方、チョウの仲間は写真3のように翅を閉じてとまることが多い。

  • 写真3 アオスジアゲハ 2021/07/21生態園にて

 しかし、多くのチョウは写真4のように翅を開いてとまることも珍しくない。つまり、チョウは翅を閉じてとまったり開いてとまったりするが、ガの場合は閉じてとまることがほとんどない、というのが実際だ。

  • 写真4 アオスジアゲハ 2021/07/21生態園にて

 そんな中で、ガの仲間なのに翅を閉じてとまる数少ない例外として知られるのがこのサラサエダシャクだ。

  • 写真5 サラサエダシャク 2021/07/14清澄山系にて

 サラサエダシャクの名は、その翅の模様が綿織物の「更紗」を思わせるところから。そういえば子どもの頃に我が家にあったタペストリーの模様によく似た印象だ。わざわざ翅を閉じて裏面を見せてとまることにどんな意味があるのかわからないが、翅裏の凝った模様を見せたい理由がきっとあるのだと想像する。

  • サラサエダシャク Epholca arenosa(シャクガ科)
  • ホソバスズメ Ambulyx ochracea(スズメガ科)
  • アオスジアゲハ Graphium sarpedon(アゲハチョウ科)

(尾崎煙雄)