教室博日記 No.1992

 2021/07/23(金)

 モミの球果

 君津市内の山中にて。木の間越しにたくさんの実をつけたモミの枝が見えた(写真1)。

  • 写真1 2021/07/23

 上面にすき間なくたくさんの実をつけた枝は見るからに重そうだ(写真2)。

  • 写真2 2021/07/23

 モミの果実は高さ10センチにもなる円柱形で、日本の針葉樹の中でもひときわ大きい(写真3)。この果実は中心の軸の周りに多数の鱗片がらせん状に並んでできている。このような果実を「球果(きゅうか)」という。マツぼっくりやスギやヒノキの果実も球果だ。モミの球果は若いうちは写真3のような薄緑色で、表面に多数のトゲのようなものがつんつんと突き出している。秋になると褐色に変わり、枝上で鱗片がばらばらに分解して落下する。この時に大きな翼のついた種子がばらまかれる。

  • 写真3 2021/07/23

 リスはモミの種子を好んで食べる。夏の山でまだ緑色の球果がばらばらになって地面に散乱していることがあるが、これはリスの仕業だ(写真4)。リスのおかげでモミの球果の鱗片がよく観察できる。鱗片は角張った扇型をしている。写真4中央左に写った鱗片には黒い模様のようなものがあるが、これは種子についた翼の一部だ。種子本体はリスに食べられてしまって残っていない。この鱗片を「種鱗(しゅりん)」といい、1枚の種鱗に1対の種子をつける。写真4の中央右に写った鱗片は左のものを裏返した形になっている。こちら側には種鱗の真ん中にもう1枚の鱗片がついている。このペン先のような形をしたもう1枚の鱗片を「苞鱗(ほうりん)」という。モミの球果の表面につんつんと突き出していたトゲのようなものは、この苞鱗の先端なのだ。種鱗と苞鱗はモミの雌花を形作る器官で、それらが成長して球果を形作る。

  • 写真4 2002/08/30清和県民の森にて
  • モミ Abies firma(マツ科)

(尾崎煙雄)