教室博日記 No.2079

 2022/02/28(月)

 千葉県産ハマグリの化石

 富津市内にて。数千年前の内湾にたまった泥質砂層を観察していると、二枚の殻がそろったハマグリの化石を見つけた(写真1)。この時代の内湾にはハマグリがたくさん棲んでいたようで、化石がよく見つかる。現在の千葉県の海でも、生きているハマグリを目にすることがあるが、もとからそこに棲んでいたものか、放流されたものか識別することは困難だ。

  • 写真1 二枚の殻がそろったハマグリの化石(スコップの刃の長さは約6センチ、写真の上が地層の上位)

 「はまぐり」と言えば、おいしい二枚貝。ひな祭りの時季になると、店先に並ぶ「はまぐり」の品揃えが良くなる。せっかくなので、富津からの帰り道にスーパーの鮮魚コーナーを訪れた。「はまぐり」として販売される貝類には、複数種が含まれる。中国産のシナハマグリ(写真2)や台湾産のタイワンハマグリ(写真3)が多かった。千葉県産の「はまぐり」として並んでいたのは、チョウセンハマグリだった(写真4)。本種は九十九里浜などの外洋に生息する二枚貝で、内湾に生息するハマグリとは別種だ。

  • 写真2 中国産のシナハマグリ(殻長は約5センチ)
  • 写真3 台湾産のタイワンハマグリ(殻長は約3~4センチ)
  • 写真4 千葉県産のチョウセンハマグリ(殻長は約8センチ)

 今日はたくさんの「はまぐり」を見たが、千葉県産ハマグリは富津の化石のみだった。鮮魚コーナーで半額になっていた「はまぐり」を購入して、お吸い物を作った(写真5)。机の上に「はまぐり」の貝殻を並べると、どれもよく似ている(写真6)。この中から、千葉県産ハマグリの化石がどれか当てられる人は、貝類を見慣れている人だ。

  • 写真5 「はまぐり」のお吸い物(お椀の直径は約11センチ)
  • 写真6 様々な「はまぐり」の貝殻
  •  上段左:チョウセンハマグリ(ハマグリよりも横長に成長する)
  •  上段右:シナハマグリ(外形がハマグリよりも丸みの強い三角形)
  •  下段左:ハマグリ(千葉県産ハマグリの化石)
  •  下段右:タイワンハマグリ(ハマグリよりも膨らみが強い)
  • ハマグリ Meretrix lusoria(マルスダレガイ科)
  • シナハマグリ Meretrix petechialis(マルスダレガイ科)
  • タイワンハマグリ Meretrix sp.(マルスダレガイ科)
  • チョウセンハマグリ Meretrix lamarckii(マルスダレガイ科)

(千葉友樹)