フィールドノート No.2106

 2022/05/09(月)

 ジャケツイバラ

 この時期、房総丘陵をドライブしていると、しばしば道脇の斜面に鮮やかな黄色の花が固まって咲いているのが目に飛び込んでくる。ジャケツイバラの花だ(写真1)。

  • 写真1 鴨川市内にて 2022/05/09撮影

 花は直径3センチほどもあり、開いた5枚の花弁の中央に赤い雄しべが見える(写真2)。雄しべは10本あるが、まとまって束になっており、雌しべはこの中に埋もれている。この花の形は、マメ科ジャケツイバラ亜科の特徴だ。

  • 写真2 鴨川市内にて 2022/05/09撮影

 同じマメ科のクズの花と比べてみると花の作りの違いがわかる。クズの花では雄しべや雌しべは外から見えない(写真3)。クズを含むマメ科マメ亜科の花は「蝶形花(ちょうけいか)」といい、上側にある大きくて目立つ花弁(旗弁という)の下側に2対の花弁(翼弁、竜骨弁)があって、雄しべと雌しべは一番下側にある2枚の竜骨弁に左右から挟まれて隠されているのだ。

  • 写真3 千葉県立中央博物館生態園にて 2020/08/25撮影

 花のつくりは違うが、さやに包まれたジャケツイバラの果実を見ると、やはりマメ科らしいと思う(写真4)。

  • 写真4 鴨川市内にて 2022/05/09撮影

 別の場所では開花前のジャケツイバラのつぼみを見つけた(写真5)。独特のリズム感のあるつぼみの様子は見ていて楽しい。

  • 写真5 君津市内にて 2022/05/10撮影

 しかし「イバラ」の名が示すとおり、その茎には鋭い棘がたくさん生えている(写真6)。この棘は邪悪と呼んでよいレベルで、衣服に引っかかればなかなか外れないし、皮膚に刺されば流血必至だ。私は山の中でジャケツイバラの茂みに突っ込んで立ち往生したことが何度もある。ジャケツイバラの花を見るといつも「花は美しいんだけどなぁ」と心の中でつぶやく。

  • 写真6 君津市内にて 2022/02/09撮影
  • ジャケツイバラ Biancaea decapetala(マメ科)
  • クズ Pueraria lobata(マメ科)

(尾崎煙雄)