フィールドノート No.2130

 2022/06/08(水)

 ミツバウツギ

 市原市にて。道端の茂みに、特徴的な果実のついた樹木がある(写真1)。

特徴的な果実のついた樹木
  • 写真1

 若い果実をつけたミツバウツギである。果実の形は、矢筈型とか尖ったハート型などと表現されることが多い(写真2)。

ミツバウツギの若い果実
  • 写真2

 果実は平たい袋状で、中に1~3個の種子が入っているはずだ。この日見つけた果実はまだ若く中の種子は未熟であったため、標本で確認してみた。ミツバウツギの種子は約5ミリで倒卵形、淡い黄色でツルッとした光沢がある。触るとコロコロと固く、結構しっかりした種子だ(写真3)。

ミツバウツギの種子
  • 写真3

 平たい袋状の果実の形状を見ても、風に飛ばされることによって種子を運ぶ風散布であることは間違いなさそうだ。しかし、それにしては種子が大きく重いと思う。風散布植物は、風に飛ばされやすいように小さく軽い種子であることが多い。種子は栄養分を蓄えて発芽率を上げるには大きい方が良いが、遠くまで移動させるには小さいほうが良い。そのどちらを重視するかは植物にとって悩みどころであろう。その悩みを「風に飛ばされたい、でも大きい種子が良い」とばかりにまるで無視しているようなミツバウツギの果実を見ると、「欲張りだなあ」と思ってしまうのは私だけだろうか。

  • ミツバウツギ Staphylea bumalda(ミツバウツギ科)

(西内李佳)