フィールドノート No.2131

 2022/06/08(水)

 シュロ

 市原市にて。空き地のような畑のような場所の一角に桑の木があった。よく見ると、桑の木の下にびっしりとシュロが生えていて驚いた(写真1)。

桑の木の下にびっしりと生えていたシュロ
  • 写真1

 シュロは元々千葉県には自生しない樹木。日本では九州南部には自生するとされる。幹のまわりを覆う茶色い繊維は強く、シュロ縄やシュロたわし、シュロ箒などに利用されるため、人間の生活には関わりが深い(写真2、3)。

  • 写真2 シュロの成木、幹は茶色い繊維で覆われる(生態園で撮影)
  • 写真3 シュロ縄(左)とシュロ箒

 そんな便利なシュロだが、近年都市部を中心に個体数が増えているようだ。シュロは鳥が果実を食べて種子を運ぶ鳥散布植物。ヒヨドリやムクドリ、カラス等の多い都市部では、特に放置された緑地にシュロが多い。さながら「シュロ林」になっているところもある(写真4)。

  • 写真4 「シュロ林」になりかけた生態園の一部(現在は伐採済み)

 あちこちでシュロを見ていると、鳥の止まり木になりそうな大きな木の下にシュロが生えていることが多い気がする。その「大きな木」も鳥散布であればなおさらだ。大きな鳥散布樹木の果実を求めて鳥が集まり、フンをしてシュロの種子を落とす。そして木の根元にシュロが生えるのだ。写真1には、その状況があまりにもはっきりと現れている。桑の木も鳥散布樹木だからだ。

 中央博物館の生態園でもシュロが増えすぎてしまい、昨年末から今年の春にかけて伐採を行った。その苦労も冷め切らないうちに「いかにも」なシュロ現場に遭遇して、シュロの生命力の強さに改めて驚かされた。

  • シュロ Trachycarpus fortunei(ヤシ科)

(西内李佳)