フィールドノート No.2152

 2022/07/28(木)

 ヒメノヤガラ

 東京大学千葉演習林にて。同行の演習林職員Mさんにヒメノヤガラの発生場所を教えていただいた(写真1)。花は終わりかけであったが(写真2)、千葉県ではめったに出会うことのない希少種だ。草丈は6〜7センチ。

  • 写真1
  • 写真2

 ヒメノヤガラはランの仲間で、緑葉を持たず光合成能力を欠き、かわりに地中の菌類から養分を吸収して生きている。このような生き方の植物は栄養面で菌類に従属しているので、「菌従属栄養植物(きんじゅうぞくえいようしょくぶつ)」と呼ばれる。見方を変えれば菌類に寄生して生きているとも言えるので「菌寄生植物(きんきせいしょくぶつ)」とも呼ぶ。かつて「腐生植物(ふせいしょくぶつ)」と呼ばれたこともあったが、「腐生」とは死んだ生物から栄養を得ることを意味するので、生きた菌類から栄養を得るヒメノヤガラのような植物を「腐生」と呼ぶのは不正確である。緑葉を持たないと書いたが、よく見ると茎に貼りつくように痕跡的な葉があることがわかる(写真3)。

  • 写真3
  • ヒメノヤガラ Chamaegastrodia sikokiana(ラン科)

(尾崎煙雄)