フィールドノート No.2157

 2022/08/08(月)

 ホルトノキ

 元清澄山にて。頭上から「ぶーん」といううなりが聞こえた。何だろうと見回すと、背の高い常緑樹の樹冠あたりから音がする(写真1)。

  • 写真1

 この樹木はホルトノキであった。小さな白い花が無数に咲いている(写真2)。ホルトノキは南方の植物で、奄美大島など南西諸島の森ではよく目にする。しかしその分布北限に当る千葉県ではホルトノキは希少な植物だ。赤く見えるのは紅葉した古い葉で、ホルトノキは常に一部の葉が紅葉しているのも特徴だ。

  • 写真2

 樹冠までは10メートル以上離れているが、望遠鏡で観察するとミツバチが飛びまわっているのがわかった(写真3)。ぶーんといううなりは花の蜜を目当てに集まったたくさんのハチの羽音だったのだ。南西諸島の森でホルトノキの花に多くの昆虫が訪れている様子は何度も見たが、房総丘陵の森でこれほど花着きがよく昆虫が群れているホルトノキを見たのは初めてだ。

  • 写真3
  • ホルトノキ Elaeocarpus zollingeri var. zollingeri(ホルトノキ科)

(尾崎煙雄)