フィールドノート No.2158

 2022/08/19(金)

 モミの『角』

 清澄山系にて。地面になにやら「角」のようなものが落ちている(写真1)。

地面に落ちている「角」のようなもの
  • 写真1

 よく見ればたくさんあった(写真2)。

  • 写真2 3つ拾って並べてみた

 これは枯死したモミの枝の付け根部分だ、と同行の先輩職員が教えてくれた。そう言われてもまだピンとこない。しばらく歩くと、「角」になる一歩手前のものが落ちていた(写真3)。

「角」になる一歩手前のもの
  • 写真3

 これを見てようやくわかった。写真3で白っぽく見えるのが「角」になる部分で、回りの材はかつての幹の一部のようだ。幹から枝が伸びる、まさにその付け根部分なのである。もし枝打ちをしていたら、この白い部分が木の「節」になっていたのだろう。枝の付け根の芯のような部分だけがなぜか堅く腐りにくいようで、回りは腐ってもこの部分だけは残りやすいらしい。白い部分は叩くとコンコンと音がするくらい堅いが、回りの材はボロボロと簡単に取れた。

 「土台」つきの小ぶりな「角」もあった(写真4)。これも枝の付け根だということがわかりやすい。

小ぶりな「角」
  • 写真4

 この「角」の中は空洞になっているものが多い(写真5)。なんと、持って帰って花瓶代わりにする人もいるそうだ。

  • 写真5 「角」の内側

 空洞になるということは、「角」の中身は他の部分と同じように腐るということだ。なぜ「角」だけが腐りにくいのか、なぜ「角」のように尖った形なのか。わからないことだらけである。モミの枝は折れやすい、と聞いたことがあるが、こんなものが枝の中にあるのに折れやすいのだろうか。いろいろ疑問が湧いてくる。

  • モミ Abies firma(マツ科)

(西内李佳)