フィールドノート No.2159

 2022/08/19(金)

 チドリノキ

 清澄山系にて。沢沿いにチドリノキが生えている(写真1)。

チドリノキ
  • 写真1

 チドリノキはカエデの仲間なのだが、カエデらしからぬ葉の形をしている。イヌシデやクマシデなど、シデ類によく似た葉だ。チドリノキの学名の種小名carpinifoliumは「シデのような葉」を意味するので、ぴったりなネーミング。ただし、カエデ属であるチドリノキは葉の付き方が対生(写真2)。シデ類は互生なので、よく見ればチドリノキだということはすぐわかる。そして、たくさんぶら下がっている特徴的なプロペラ型の果実を見れば、カエデ属だということは疑いようがない。

チドリノキの葉
  • 写真2

 果実の写真を撮っていて、ふと気になった。果実の先端が塗り分けられたように茶色くなっているものが多い(写真3)。

チドリノキの果実
  • 写真3

 先月も、清澄山系でチドリノキの果実を見た。その時はどうだったかというと、やはり先端が茶色くなっているものがあったが、全部緑色のものも結構あった(写真4)。

小ぶりな「角」
  • 写真4 2022/7/28清澄山系で撮影

 カエデ属の果実は、熟すと全体が茶色になる。7/28と今回、どちらも果実を採集したが、どちらもまだ種子が入っていない未熟な状態であった。先端が茶色いくらいではまだまだ「完熟」にはほど遠いらしい。

 カエデ属果実の熟し方が気になって図鑑で調べてみると、先端だけ塗り分けられたように茶色くなっている果実の写真が、チドリノキ以外にも見られた。カエデ属の果実が、未熟なうちは緑色で(赤みを帯びる種もある)熟すと茶色くなることは知っていたが、こんなツートンカラーのようにはっきりと先端から色が変わっていくとは気づかなかった。「完熟」まで観察できればよいなと思う。

  • チドリノキ Acer carpinifolium(ムクロジ科)

(西内李佳)