フィールドノート No.2160

 2022/08/19(金)

 マツカゼソウ

 清澄山系にて。林道沿いに白い花を咲かせた草がたくさん生えている(写真1)。

白い花を咲かせた草
  • 写真1

 マツカゼソウである。房総丘陵では林道沿いや沢沿いで割とよく見る草だ。花期も8~10月と長いので「ああ、マツカゼソウか」とスルーしがちだが、この日はあちこちでよく咲いていたので観察しようという気になった。小さい白い花は結構かわいい(写真2)。

マツカゼソウの花
  • 写真2

 マツカゼソウが群生している場所を突っ切って歩くと、なんとも形容しがたい匂いがする。マツカゼソウはミカン科マツカゼソウ属に属する。この属はミカン科の中で唯一の草本らしい。ミカン科には葉などに芳香があるものが多く、マツカゼソウも例外ではないということだ。

マツカゼソウの花
  • 写真3

 写真3の中央左の花は、もう雄しべが落ちてしまっている。緑色の膨らみが子房で、果実になる部分。

 果実は秋に熟す。標本で確認してみた(写真4)。

マツカゼソウの花
  • 写真4 果実と種子

 写真3の緑色の部分がそのまま果実になり、熟すと開いて中の種子がこぼれ落ちる構造のようだ。種子散布のための特別な工夫は見られないが、標本になってもまだ果実の中に種子が残っているところを見ると、強い風が吹いた時に少しずつこぼれ落ちるようにはなっているのかもしれない。

 マツカゼソウは漢字で「松風草」と書くらしい。由来ははっきりしないようだが、秋風に揺れるさまを表しているという説があるようだ。なかなか風流な名前だが、果実の構造から見ると「待風草」でもよいかもしれない。

  • マツカゼソウ Boenninghausenia albiflora(ミカン科)

(西内李佳)