フィールドノート No.2171

 2022/09/15(木)

 愛らしい形のモクハチアオイ

 館山市内にて。この場所では、数千年前の内湾にたまった砂層が観察できる。変わった形の貝化石を見つけた(写真1)。モクハチアオイという二枚貝だ。

  • 写真1 モクハチアオイの化石(目盛の単位はミリ)

 成長すると3センチくらいになるが、約0.5センチの幼貝だ。二枚の殻が合わさる面を正面に持ってくるとハート形をしているのが特徴だ。この日は、日没まで探しても片方の殻しか見つけられなかったので、半分に割れたハート形だ(写真2)。もう片方の殻は想像力でどうか補ってほしい。モクハチアオイの仲間はその愛らしい形が人気で、水族館のお土産コーナーでも貝殻や加工品をよく見かける。

  • 写真2 モクハチアオイの化石(写真1を別な角度から撮影) 想像力でもう片方の殻を補うと、愛らしいハート型になる

 モクハチアオイは紀伊半島や鹿児島県以南に分布すると言われているが、生きている個体にはなかなかお目にかかれない。数千年前の温暖な時期には、関東地方にも生息していたらしく、今回の例のように地層中から見つかることがある。南房総の海岸で貝殻拾いをすると、モクハチアオイの貝殻がたまに落ちているが、数千年前の地層から洗い出されたものかもしれない。

  • モクハチアオイ Lunulicardia retusa(ザルガイ科)

(千葉友樹)