フィールドノート No.2177

 2022/09/16(金)

 イノシシのぬた場

 清澄山系にて。幅の広い尾根上に水たまりがあった(写真1)。周囲のシダの葉が泥で汚れて白くなっている。

  • 写真1

 水たまりの周囲の地面は柔らかな泥で、獣の足跡が残っている(写真2)。この足跡はイノシシのものだ。シカやウシと同じ偶蹄類(ぐうているい)に属するイノシシの足先には大きな2本の蹄(ひづめ)がありこれを主蹄(しゅてい)という。固い地面であればこの2本の主蹄の跡が残るので、シカの足跡とよく似ている。しかし、イノシシには主蹄の後方の左右に1対の短い蹄があり、これを副蹄(ふくてい)という。柔らかな泥の上を歩くと副蹄の跡も残るので、4本指の足跡となりシカの足跡とは異なる。

  • 写真2 青い三角が主蹄、黄色い三角が副蹄の跡

 この水たまりはイノシシの「ぬた場」である。イノシシには泥の上を転げ回って全身に泥を浴びる習性がある。この泥浴びはダニなどの寄生虫を落としたり、体温を下げたりするための行動と考えられている。そしてイノシシの泥浴び場のことを「ぬた場」と呼ぶ。ぬた場の近くにある木の幹が泥で汚れていることが多い(写真3)。泥浴びをしたイノシシが幹に身体をこすりつけて泥を落とした跡だ。

  • 写真3

 こちらの切り株は泥落としに具合がよいのか、全面が泥に覆われていた(写真4)。

  • 写真4
  • イノシシ Sus scrofa(イノシシ科)

(尾崎煙雄)