フィールドノート No.2178

 2022/09/21(水)

 ノジュールに閉じ込められたカニ化石

 館山市内にて。この場所では、数千年前の内湾にたまった泥層が観察できる。雨で洗われた泥層の表面にカニ化石を見つけた(写真1)。やさしくさわってみると、カニ化石の周囲の泥が固くなっている。このため、周囲の泥層よりも侵食に強く、出っ張るようだ。

  • 写真1 泥層中に見られるカニ入りノジュール(地層のほぼ水平面を見ていることに注意)

 カニが死んで腐敗すると、身から周囲の泥に炭素成分がしみ出る。海水中のカルシウムイオンと身由来の炭素成分が化学反応を起こして、炭酸カルシウムができると、カニは周囲の泥ごと固くなるらしい。このような物体はノジュールと呼ばれる。ノジュールに閉じ込められたカニ化石は、保存状態が良い場合が多い。

 カニに詳しい同僚に写真を見せると、ノコハオサガニに似ているとのことだった。南房総の海岸ではカニ入りノジュールが落ちていて、数千年前の地層から洗い出されたものと考えられているらしい。もともとの地層に含まれているカニ入りノジュールを見ることができた。この場所では、ウラカガミという二枚貝入りノジュール(写真2)も見られるため、ノジュール形成のきっかけとなるのは、二枚貝の場合もあるようだ。

  • 写真2 泥層中に見られる二枚貝入りノジュール(スコップの柄の長さは約10.5センチ、地層のほぼ水平面を見ていることに注意)
  • ノコハオサガニ Venitus latreillei(オサガニ科)
  • ウラカガミ Dosinia corrugata(マルスダレガイ科)

(千葉友樹)